ロシアは12月5日、世界に先駆けて一般市民への新型コロナウィルス(COVID-19)用ワクチン大規模接種を開始した。これは、12月初めに米・ドイツ製薬会社が開発したワクチンを認可し、12月8日から一般接種を開始する計画をしていた英国に先んじるもので、ウラジーミル・プーチン大統領(68歳)の威信にかける思いは強い。
12月6日付
『ABCニュース』(
『AP通信』配信):「ロシア、数十ヵ所のCOVID-19ワクチン接種センターを開設」
モスクワでは12月5日、70ヵ所のCOVID-19用ワクチン接種センターが開設され、医者・教師・介護士等感染リスクが高い職場の従事者向けの大規模接種が始められた。
これは、ウラジーミル・プーチン大統領が12月2日に、政府が認可した国産ワクチン“スプートニクⅤ”の大規模接種を開始するよう関係当局に指示したことに基づくものである。
その際同大統領は、200万回分余りの同ワクチン生産の目処が立ったため、医療従事者や教師等を優先して接種を開始させると表明していた。
そこで、新規感染者が全国の4分の1程を占めるモスクワにおいて、まず当該接種が始められた。
同市のセルゲイ・ソビヤニン市長(62歳)によると、12月4日にオンラインで受付けを開始したところ、数時間で約5千人が接種申請をしてきたという。
ただ、当該ワクチンはまだ最終段階の臨床試験が終わっておらず、プーチン大統領自身まだ接種する意向を示していない。
開始当日に接種を受けたあるモスクワ市民は、“(副作用等)まだ心配があるのは事実だが、ワクチン効能の可能性に期待して接種を受けることを決心した”と語った。
ロシア政府が今年8月初めに当該ワクチンを認可した際、世界の感染症専門家らから、数十人の臨床試験だけで認可することの危険性につき批判が出された。
しかし、同大統領は当時、自身の次女が臨床試験に参加しており、問題はなかったとしてその批判を一蹴している。
また、ミハイル・ムラシュコ保健相(53歳)も12月2日、既に10万人以上が当該ワクチンの臨床試験に臨んでおり、問題は発生していないと強調した。
ロシア政府は、慢性疾患や妊娠中の人を除いて、18~60歳の市民に無料でワクチン接種を行うとしている。
ロシア政府の幹部数人も既に当該ワクチン接種を受けており、ロシア軍も今週(12月第1週)、間もなく任務で出航する軍艦の乗組員へのワクチン接種を開始している。
一方、当該ワクチン開発に資金援助したロシア直接投資基金(RDIF、2011年設立)のキリル・ドミトリーエフ代表(45歳)は先月、来年にはロシア国外の生産拠点で、10億回分以上のワクチンが生産される見込みだと発表している。
また、当該ワクチン開発会社は先月、中間段階での臨床試験による効果は91.4%だったことを明らかにしている。
ただ、治験者1万8,794人に対して39人の感染者だった結果を基にしたとされていて、西側諸国のワクチン開発製薬会社が行っている臨床試験の数に比較して遥かに少ない。
なお、ロシアでは12月5日、新規感染者がモスクワの7,993人含めて全国で2万8,782と最多記録を更新している。
そして、これまでの累計では、感染者総数が240万人超となり、米国、インド、ロシアに続いて世界で4番目に多い数値となっている。
また、COVID-19による死者は4万2,684人である。
12月5日付『ロイター通信』:「ロシア、感染リスクの高い人を優先してスプートニクⅤワクチン接種開始」
RDIFのドミトリーエフ代表は12月5日、英『BBCニュース』のインタビューに答えて、スプートニクⅤワクチンは今月中に約200万人に対して接種が行われる見込みだと語った。
また、ムラシュコ保健相も12月2日、国連機関への報告の中で、感染リスクの高い人を中心に既に10万人に接種を行っていて、問題は発生していないと表明している。
なお、スプートニクⅤワクチンは、最初の接種から21日間空けて二度注射を受ける必要がある。
また、タチアナ・ゴリコバ副首相(54歳、社会政策・労務・保健・年金担当)によると、ワクチン接種後は公共の場には行かないようにし、更に、薬やアルコールは免疫を弱めてしまうので、1度目の接種後42日間はそれらを控える必要があるという。
閉じる