これまで報じたとおり、中国と親密なロシア等限られた主要国首脳を迎えて、習政権肝いりの軍事パレードが行われた。日本や欧米主要国の首脳が一斉に出席を見合わせたものの、習指導部としては、国内外に中国の大国としての存在感を見せつけられたと自画自賛している。しかし、米メディアは、その陰に隠れた不透明さ、キナ臭さ、内外に与える影響につき詳報している。
9月3日付
『ボイス・オブ・アメリカ』は、「習近平(シー・チンピン)国家主席は9月3日、来賓及び軍事パレードに参加した1万2千人の人民解放軍兵士を前に演説し、大国の地位を確立した中国は、今後平和国家として歩むことを誓い、その体現として、兵士を30万人削減すると宣言した(編注;現在は230万人と言われている)。しかし、これまでの中国の行動、また、今回の大々的な軍事パレード等をみると、不透明さやキナ臭さが垣間見えてくる。すなわち、
①軍事力削減:今回のパレードは、歴史を認識し、平和の大切さを示すためとしているが、披露した戦車、兵器、戦闘機等の規模からみると、むしろ周辺国を不安にさせる。特に、射程距離8,000キロメーターの大陸間弾道弾ミサイルは、米本土に届くもので、かつての米ソのような軍事力競争の様相を呈している。
②経費等の不透明さ:北京の青空を取り戻すため、近郊の数千の工場を一時休業させ、火力発電所の操業もストップ、更には、パレードが繰り広げられる天安門広場、長安大通り周辺への一般市民や車の立ち入りを制限したため、その周辺でのレストラン等の商売はできなくなっているが、政府からの補償があるとは思われない。また、パレード行進中の約3時間は民間航空機の飛行も禁止されている。一方で、軍事パレード含めた諸行事の経費は税金で賄われているが、国民には一切開示されていない。
③メディア等の制限:特に批判的なコメントを掲載するウェブサイトなどのソーシャルメディアへの検閲が強化され、また、一般の外国人旅行者も、(国内外への勝手な情報発信を恐れてか)行事が繰り広げられる主要な施設、建物等には立ち入り禁止措置が取られている。」と報じた。
また、同日付
『ハフィントン・ポスト』紙(
『ロイター通信』記事引用)は、「米国防総省が9月2日に明らかにしたところによると、アラスカ沖のベーリング海に中国海軍の軍艦5隻が現れたという。丁度オバマ大統領がアラスカ州を訪問している最中であり、また、米政府がベーリング海で中国の軍艦を認めるのは初めてのことであるため、関心が高まっている。なお、今月後半に習主席が訪米する予定であるが、両首脳の話題のひとつに、膨張した中国の軍事力が挙げられよう。」と伝えた。
なお、習主席の訪米に当って、特に共和党の大統領選有力候補から、対中強硬論が上がっている。マルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)は、中国は米国の安全保障にとって危険を増大させている。米国をアジアから追い出そうとし、東・南シナ海で一方的に領有権を主張していると批判した。また、ドナルド・トランプ氏(不動産王の異名を取る実業家)も、中国がしてきたことは、米国人の職や金を奪うことで、そのような中国の主席を、税金で賄う公式晩餐会に招待する必要などなく、マクドナルドのハンバーガーを食べさせれば良いと皮肉っている。更に、他の有力候補も、国賓待遇は、特別の友好国や同盟国のために用意すべきだとして、見直しを要求している。
「中国共産党政府主催の戦勝70年記念軍事パレード」前シリーズは以下をご参照ください。
「
中国共産党政府主催の戦勝70年記念軍事パレード(3)」
「
中国共産党政府主催の戦勝70年記念軍事パレード(2)」
「
中国共産党政府主催の戦勝70年記念軍事パレード(1)」
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