ヒマラヤ山脈西部のカシミール地方では、今年6月以降中印間の武力衝突が頻発していて再び緊張が高まっている。そうした中、同地方の一部地域の領有権を主張している親中パキスタンがこの程、同地域を州に格上げすると一方的に宣言したことから、インドが猛反発し、新たな火種となっている。
11月5日付米
『ABCニュース』(
『AP通信』配信):「パキスタン首相によるカシミール地方の一部地域の州昇格発言にインドが猛反発」
パキスタンのイムラン・カーン首相が今週初め、かねてより実効支配しているカシミール地方の一部地域であるギルギット・バルティスタンを同国5番目の州に格上げすると一方的に宣言した。
同地域については、インドがジャム・カシミール州として70年も自治権を認めてきたが、昨年突然これを撤廃し直轄地とするとしたことから、パキスタン側との対立が激化してきていた。...
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11月5日付米
『ABCニュース』(
『AP通信』配信):「パキスタン首相によるカシミール地方の一部地域の州昇格発言にインドが猛反発」
パキスタンのイムラン・カーン首相が今週初め、かねてより実効支配しているカシミール地方の一部地域であるギルギット・バルティスタンを同国5番目の州に格上げすると一方的に宣言した。
同地域については、インドがジャム・カシミール州として70年も自治権を認めてきたが、昨年突然これを撤廃し直轄地とするとしたことから、パキスタン側との対立が激化してきていた。
カシミール地方は現在、インドとパキスタン間で実効支配地域が分かれているが、両国が1947年に英国から独立して以来、それぞれが自国の領土だと主張してこれまで二度戦争を起こしている(1947年10月~1948年12月:第一次印パ戦争、1965年8月~9月:第二次印パ戦争)。
これらの戦争によって、兵隊に加えて市民等数万人が犠牲となっている。
カーン首相は11月1日、11月15日に予定されている地方選に備えてギルギット・バルティスタン地域を訪れた際、同地域を“暫定的に州に格上げ”すると発言したものだが、同地域は、パキスタン同盟国の中国が重点政策として推進している一帯一路経済圏構想下にある開発対象地域である。
すなわち、中国は、パキスタン南西端のグワダール港までの貿易陸路を確保するため、600億ドル(約6兆3千億円)の中パ経済回廊(CPEC、注後記)政策を推進しており、その経路としてギルギット・バルティスタン地域は重要拠点となっている。
このパキスタン首相の宣言について、インド政府は早速、ギルギット・バルティスタン地域は“インドの重要な領土”であるとした上で、“パキスタンには何ら合法的に同地域を占有する権利はない”と猛反発している。
一方、インドが直轄統治としたジャム・カシミール州に暮らすイスラム教徒は、1989年以来インド政府に反抗しているイスラム武装勢力を支援していて、同地域がパキスタン領になるか、あるいは独立国となることを切望している。
一方、同日付パキスタン『パキスタン・テレグラフ』紙:「活動家、パキスタン首相によるギルギット・バルティスタン地域の州格上げは非合法と主張」
ギルギット・バルティスタン地域で活動するインド系住民は11月4日、カーン首相による同地域の州格上げ宣言は違法だとアピールした。
何故なら、同地域はパキスタンが非合法の下で実効支配しているからだという。
更に、活動家らによれば、カーン首相の発言は、近々行われる地方選の対策用でしかなく、また、中国が推し進めるCPECの利益誘導のためでしかないという。
なお、同地域はインド、パキスタンが1947年に独立する以前は、英国領インドのジャム・カシミール州であったが、独立後の同年10月、パキスタンが軍隊を投入して以降、現在に至るまで実効支配してきている。
(注)CPEC:2014年に習近平(シー・チンピン)国家主席が立ち上げた一帯一路経済圏構想下、欧州・アフリカまでの海路につなぐために、アラビア海に面するグワダール港までの約3千キロメートルの陸路を開発しようとしたプロジェクト。道路、鉄道に加えて発電所の建設も含むインフラ整備事業。
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