菅義偉新首相(71歳)は、安倍晋三前首相(66歳)の政策を踏襲すると標榜している。それに倣えば、初外遊は米国に向かいたいところだろうが、来月早々に米大統領選を控えていること、また、どちらが勝利を収めるか不確定なところから、訪米は諦めて、もうひとつのレガシーである「自由で開かれたインド太平洋構想(FOIP)」具現化を目指して、東南アジア諸国連合(ASEAN)の雄、かつ、南シナ海領有権問題で中国と対峙しているベトナムとインドネシアを最初の訪問先に選んだ。今後の手腕が期待されるところだが、米メディアは、ご祝儀相場で高支持率を得ていても、大衆迎合の小さな独自政策しか打ち出せていないとして、長期政権を期待するのは難しいと報道している。なお、政権基盤がぜい弱であった安倍第一次政権(2006~2007年)も、初めて政権奪取した鳩山由紀夫民主党政権(73歳、2009~2010年)も、就任早々の支持率が高かった割に短命で終わっている。
10月17日付
『AP通信』:「大衆に訴える実利主義の菅新首相、安倍前首相の構想を追随」
菅義偉新首相は10月18日、初の外遊先であるベトナムとインドネシアに向け出発する。
同新首相がこの2ヵ国を最初の訪問先として選択したのは、中国による影響力への対抗、及びアジア地域の国々との経済連携強化という、安倍晋三前首相が標榜していた構想を追随するという考えがあると言える。
そして、安倍氏の方針をなぞるかのように、ベトナムとの国防装備品・技術移転協定を成立させることで、日本製武器の輸出拡大を促進していくことが期待されている。...
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10月17日付
『AP通信』:「大衆に訴える実利主義の菅新首相、安倍前首相の構想を追随」
菅義偉新首相は10月18日、初の外遊先であるベトナムとインドネシアに向け出発する。
同新首相がこの2ヵ国を最初の訪問先として選択したのは、中国による影響力への対抗、及びアジア地域の国々との経済連携強化という、安倍晋三前首相が標榜していた構想を追随するという考えがあると言える。
そして、安倍氏の方針をなぞるかのように、ベトナムとの国防装備品・技術移転協定を成立させることで、日本製武器の輸出拡大を促進していくことが期待されている。
ただ、同前首相が注力していた日米関係については、目下大統領選を控えた米国は国内問題で手一杯であり、かつ新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題の改善見通しが立っていないことから、訪米は見送らざるを得なかった。
8年近くに及ぶ安倍政権にあって、安倍氏が外交で飛び回っていた間、菅氏は官房長官として主に内政に注力してきた。
菅首相は就任1ヵ月を迎えた10月16日、“必要と思ったことは躊躇することなく、可及的速やかに取り組んでいく意向で、可能と思われる事項から着手していく”とし、“かかることから、改善がなされていることに国民に気付いてもらえればと思う”と記者団に語った。
この考えの下、まず同首相は、日本の旧態依然の“ハンコ文化”を変革すること、また、前職時代からも掲げていた携帯電話料金の値下げ、官民挙げての業務オンライン化について、早急に成果を出すよう担当大臣に求めている。
更に、少子化に伴う人口減少問題に取り組む一環で、不妊治療の保険適用化も進めていくとしている。
東京工業大学の社会学者西田亮介准教授(37歳)は、“菅首相は、目下の高支持率維持のため、国民の目に留まりやすい政策から実行して行こうとしている”とし、“ひとつひとつ目に見える改革をしていくことで、現政権が成果を上げていることを知らしめていくという戦略だ”と分析している。
しかし、一方で菅首相は、日本学術会議会員の任命に当たり、これまでの慣例を無視して、同会議推薦の105名のうち6名の任命を拒否している。
これによって、同首相が異議等唱える人を黙らせようとしているとか、学問の自由に悪影響を与える行為だ等、非難の声が上がっている。
歴史学者の保阪正康氏(80歳)は、『毎日新聞』の記事上で、同首相の行為を“粛清”だと断罪している。
今回の任命拒否で、同首相に危機をもたらすことはないとみられるものの、就任当時の支持率60%超だったものが、先週では50%台に落ちている。
また、同首相が直接指示したものではないかも知れないが、文部科学省が全国の学校に対し、10月17日に行われる故中曽根康弘元首相(1918~2019年)の国葬に当たって、国旗掲揚や鯨幕(黒白縦縞の幕)を張る等で弔意を示すよう通達を出していることが判明し、学問の自由の侵害との声が上がっている。
更に、安倍前首相に倣うということで、菅首相が10月17日、靖国神社の例大祭に合わせて供物を奉納している。
同神社については、第二次大戦のA級戦犯が祀られていることから、中国や韓国が軍国主義の象徴だとして絶えず非難の声を上げてきている。
そこで西田准教授は、“菅首相はイデオロギーも政治的構想も持たない政治家とみられていることから、全てが選挙のための行動とみられてしまいがちだ”とした上で、“中長期的な政策目標を明確に示せないことが命取りとなりかねない”と評価している。
また、安倍氏批評家と知られる上智大学国際教養学部の中野晃一教授(50歳)は、無派閥の菅首相として、派閥の領袖に配慮した閣僚人事を行い、与党内から反発されないよう気を配っているが、間もなく党内の支持を失う恐れがあると分析している。
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