日本は、世界経済フォーラムが公表している「世界男女格差指数2020年版」(注後記)で、評価対象153ヵ国中121位と、他の先進国より大きく後れを取っている。それと根を同じくする「性的少数者(LGBT)の権利擁護」の問題についても、世界80ヵ国以上で制定されている「LGBT平等法(性的志向等による差別禁止法)」が日本では制定されていない。そこで、LGBT関連団体や国際人権NGO等が中心になって、来年の東京オリンピック・パラリンピック開催前を目処に、当該法の制定を国会に求める署名運動が大々的に始まった、と米メディアも報じている。
10月15日付
『AP通信』:「日本のLGBTグループ、LGBT平等法制定を求めて署名活動開始」
日本のLGBTグループ及び人権団体が10月15日、性的少数者への差別を禁止する「LGBT平等法」制定を求めて署名活動を開始すると発表した。
LGBT法連合会の五十嵐ゆり共同代表(47歳)は、“日本では、LGBT平等法がなく、性的少数者の権利が守られていない”とした上で、“オリンピック憲章は性的志向による差別禁止を謳っていることから、来年の東京大会前までに同法を成立させ、「大会のレガシー(遺産)」にしたい”と訴えた。...
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10月15日付
『AP通信』:「日本のLGBTグループ、LGBT平等法制定を求めて署名活動開始」
日本のLGBTグループ及び人権団体が10月15日、性的少数者への差別を禁止する「LGBT平等法」制定を求めて署名活動を開始すると発表した。
LGBT法連合会の五十嵐ゆり共同代表(47歳)は、“日本では、LGBT平等法がなく、性的少数者の権利が守られていない”とした上で、“オリンピック憲章は性的志向による差別禁止を謳っていることから、来年の東京大会前までに同法を成立させ、「大会のレガシー(遺産)」にしたい”と訴えた。
日本では、LGBTについて徐々に知れ渡りつつあるが、依然、LGBTであることを理由に差別される事態が発生しており、従って、家族にも内緒にせざるを得ない人たちもいる。
そして、依然日本では同性婚が法的に認められておらず、また、トランスジェンダーの人は、性転換手術を受けない限り公的文書上で、性転換したとは認められない。
この条件付けについては、国際的医療専門家や人権活動グループから非人道的と非難されている。
ところが、最近でも、菅義偉新首相率いる与党・自民党所属の東京都区議が、LGBTの人たちが法的に擁護されるようになると、同区内でLGBTの人たちがはびこり、結果として同区が人口減少に遭って消滅してしまう、との暴言を吐いている。
日本における差別の証人として、まず、女子フェンシング元オリンピック代表で、現在トランスジェンダー活動家の杉山文野氏(39歳)は、15年前に同競技でしのぎを削っていた頃、自身がトランスジェンダーであることを明かして不利な待遇に遭うことを恐れて、公表することができなかったと述べている。
また、かつてドイツのSVマッペン(ブンデスリーガ2部のチーム)でプレーしていた女子サッカー選手の下山田志帆氏(25歳)は昨年、著名なスポーツ選手として初めて同性のパートナーがいることを公表した。
同氏は現在、日本のスフィーダ世田谷FC(なでしこリーグ2部のチーム)でプレーしているが、同性カップルが当たり前の国であるドイツにいたことから、タブー視される日本でも思い切った決断をしている。
ただ、同氏は10月15日の記者会見で、“(同性パートナーを持つという)セクシャルマイノリティであることで異端視されたり、攻撃の標的とされたりして、気持ちの上でも、また、スポーツに取り組む上でも生きにくさを痛感している”とした上で、“従って、LGBT平等法制定によって、少しでも日本における環境の変化がもたらされることを切望する”と訴えた。
なお、経済協力開発機構(OECD)東京センターの村上由美子所長(55歳)によると、LGBT平等性評価で日本はOECD加盟国中最低のレベルであり、しかも、セクシャルマイノリティがどれ位存在するのか統計も取っていないという。
一方、署名活動に着手したLGBTグループは、来年早々署名集約の上で、各党の国会議員宛に提出し、議員立法の提案に向けて活動するよう要請していく意向である。
(注)世界男女格差指数2020年版:経済・教育・政治・保健の4分野の14の変数を総合して評価したもので、2019年末に公表。トップ3は北欧(アイスランド、ノルウェー、フィンランド)で、その他主要国の順位は、10位ドイツ、15位フランス、19位カナダ、21位英国、43位豪州、55位米国、107位中国、109位韓国。
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