フランス西部にあるナント歴史博物館は、今月17日から予定されていたモンゴル帝国をテーマにした展覧会を中止にした。中国政府の干渉を受けて中止されたもので、主催者側は「検閲」に屈することを拒否し、2024年に別の形で展示する計画だという。
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『ルモンド』によると、ナント歴史博物館は、考古学的、芸術的、地図学的にも豊富なコレクションを持つ中国フフホト市の内モンゴル博物館と提携することにより、12世紀から13世紀にかけて活躍したモンゴル帝国初代皇帝チンギス・カンにスポットを当てた展覧会を開催する予定でいた。フランスでは見ることのできない13世紀から14世紀にかけての御璽や金で造られた品々のコレクションを含む235点がナント博物館に運ばれることになっていた。
しかし、ナント歴史博物館の館長であるベルトラン・ギイェ氏はプレスリリースで「中国当局による検閲行為」のために、当初予定していた形式で展示会を行うことができなくなったと発表した。
仏『ルフィガロ』によると、博物館館長のギイェ氏はプレスリリースの中で、「私たちは、私たちが守る人間的、科学的、倫理的な価値観の名の下に、この制作を中止することを決定した 」と説明しており、中国当局による検閲を受けたとしている。
具体的には、中国当局から「展覧会の中の、チンギス・カン、帝国、モンゴルなどの語彙を削除するようにとの差し止め命令」を受けたこと、そして「展覧会の内容変更に加えて、すべての文章、地図、カタログ、広告などの制作物の管理を求める要求」があったと説明している。
また同氏は、「中国国家文物局が提案した検閲の概要は、モンゴルの歴史と文化の完全な根絶、そして新しい国家の歴史に書き直すという目的の、偏った要素が含まれている」と付け加えている。
ナント歴史博物館は今後、ヨーロッパとアメリカから供給されたコレクションを中心に、当初の目的に沿ったモンゴル帝国の展示会を再度準備していく方針だという。
ギイェ館長は、展覧会の内容を変更しようとする中国当局の干渉は、「モンゴルの少数民族に対する中国政府の立場が硬直化している」ことを示していると指摘している。中国北部に位置する内モンゴル自治区には420万人のモンゴル人がおり、人口の17%を占めているが、9月には、北京が学校のカリキュラムで北京語を課そうとしていることに抗議するデモが行われた。
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