9月24日付
『FactCheck.org』:「トランプ大統領、自動車産業に関して嘘の発表」
ドナルド・トランプ大統領は常日頃から、事実に基づかない、紛らわしいコメントを発信している。
今回、自動車産業に関わって発言された事項について真偽の程を検証したところ、嘘や誤解が多く含まれていることが判明した。
(1) 日本車工場新設
「9月19日のノースカロライナ州及び9月21日のオハイオ州での支持者集会で、トランプ大統領は、安倍晋三首相がミシガン州に日本車工場を新設するよう5社に促すことを約し、翌日には確定したと発言。また、同州及びオハイオ州には直近40年間、自動車工場は建設されていないとも付言。」
日本車メーカーのどの5社も、生産工場新設計画を決定・発表していないし、また、未だ実現もしていない。
ただ、自動車生産工場ではないが、日本車メーカーは以前、ミシガン州に以下の投資をする旨発表している。
・ホンダ:ゼネラルモーターズ(GM)との合同事業体として、GMの同州工場を拡張して、水素電池生産工程を導入する旨、2013年7月に公表。総費用8,500万ドル(約89億円)で約100人の雇用創出。
・ルノー/日産/三菱:電気自動車用充電ステーションを2つ設置する旨、2017年6月に発表。また、4,100万ドル(約43億円)をかけて北米技術開発センターを拡張することを決定。85人の新規雇用創出。
・トヨタ:自動運転車のテスト施設を建設すると2018年5月に公表。
・スバル:技術開発研究所を4,800万ドル(約50億円)かけて新設する旨、2018年8月に発表。100人の新規雇用創出。
一方、米GMが2006年にミシガン州に軽自動車生産工場を新設、また、米フィアットクライスラーが2005年、オハイオ州に同じく軽自動車工場を完成させており、直近40年間で、自動車工場が全く建設されていないことはない。
(2) 他国の自動車メーカー
「2019年6月、トランプ大統領は、欧州自動車メーカーがここ数十年、米国内にただのひとつも工場を新設していないと発言。」
スウェーデンのボルボが2015年9月、また、ドイツのメルセデスベンツが2016年7月に、それぞれサウスカロライナ州に生産工場を新設している。
更に、同大統領が2017年初に就任して以降も、トヨタ・マツダ合同事業体が2018年1月にアラバマ州に生産工場を新設すると発表、また、フィアットクライスラーも2019年2月、ミシガン州に新工場建設計画を発表している。
(3) オバマ政権との比較
「事あるごとに、オバマ政権時代を上回っていると発言。自動車産業においても同様で、生産・販売とも記録更新と主張。」
全米で比較すると(公平を期すため、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題に伴う景気後退時期を除くと)、トランプ政権下の2017年1月~2020年2月の37ヵ月間の自動車産業就業者数は+4万9,300人(+5.2%)の増加だが、オバマ政権下の同期間では、+9万9,600人(+11.6%)増加。
ミシガン州だけでみてみると、2017年1月以来、同就業者数は▼2,400人減少。これをCOVID-19感染影響のある今年8月まで延ばしてみると、▼1万8,400人もの減少(失業)となる。
一方、全米の自動車生産台数は、オバマ政権下の2016年は1,220万台と2000年以来の高い実績を上げたが、2017年以降毎年減少していて、(COVID-19前の)2019年実績は1,088万台と▼11%減少している。
また、総販売台数も、2016年は1,755万台と記録を更新したが、2019年は1,705万台と▼3%減少しており、記録更新はトランプ政権下の話ではない。
(注)ファクトチェック機関:情報の正確性・妥当性を検証する、外部の独立したファクトチェック機関。公表された情報の正確性・妥当性について、独自指標を使って視覚的に判定することが多い。ペンシルベニア大学が運営するFactCheck.org(2003年設立)、『ワシントン・ポスト』紙がサイト内で運営するファクトチェック企画のFact Checker(2007年設立)、『タンパベイ・タイムズ』紙が運営するポリティファクト(2007年設立)などが挙げられる。
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