既報どおり、米中両大国は、貿易紛争を皮切りに、南シナ海、台湾、香港問題を契機とした軍事対立と、関係修復が不可能となりかねない程深刻化している。そして直近でも、スパイ疑惑に伴っての双方の領事館閉鎖命令と、こじれるばかりである。そこで、特に偶発的事態による軍事衝突は避けるべく、双方の国防大臣が3月以来の電話会談を行ったが、結局、お互いの主張を言いっ放すだけで終了した模様で、全く改善の糸口も見出せていない。
8月7日付
『ロイター通信』:「米国防長官、中国国防部トップに対して南シナ海での活動につき懸念表明」
米国防総省のマーク・エスパー長官(56歳)は8月6日、今年3月以来5か月ぶりに中国国防部(省に相当)の魏鳳和(ウェイ・フォンホー、66歳)部長と電話会談した。
国防総省のジョナサン・ホフマン報道官によれば、同長官から中国に対して、台湾や南シナ海における“動揺を煽る”行動に関し懸念を表明したという。...
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8月7日付
『ロイター通信』:「米国防長官、中国国防部トップに対して南シナ海での活動につき懸念表明」
米国防総省のマーク・エスパー長官(56歳)は8月6日、今年3月以来5か月ぶりに中国国防部(省に相当)の魏鳳和(ウェイ・フォンホー、66歳)部長と電話会談した。
国防総省のジョナサン・ホフマン報道官によれば、同長官から中国に対して、台湾や南シナ海における“動揺を煽る”行動に関し懸念を表明したという。
同報道官はまた、1時間半に及ぶ会談の中で、“中国人民解放軍(PLA)が国際法に則って、秩序ある行動を取ることが重要”だと強調したと伝えた。
米中両国は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題への対応、中国通信機器大手メーカー華為技術集団公司(ファーウェイ)の通信機器問題、南シナ海における一方的な領有権主張、更には香港の自治を制限する立法化等で、対立が益々激化してきている。
従って、米国防総省としては、米中間の偶発的衝突リスクを回避すべく、“クライシス・コミュニケーションズ”について協議を進める必要があり、エスパー長官自身、年内中に訪中する意向を表明している。
同日付中国『新華社通信』:「中国国防部長、米国国防長官と電話会談」
魏国防部長は8月6日、米国側の求めに応じてエスパー長官と電話会談した。
同部長は米国側に対して、南シナ海や台湾に対する原則、及び米国側の一方的な非難についての中国の立場を説明した上で、米国側の誤った表現や行動を正すよう求め、かつ、地域の平和と安定を維持すべく、悪戯に緊張を高めるような活動を止めるよう要求した。
これに対して同長官からは、危機管理、誤った判断の回避、またリスク軽減のため、両国国防部門の対話・協議を継続していくことが必要だとの表明があった。
(注)クライシス・コミュニケーションズ:不測の事態を未然に防止するため、また、万一不測の事態が発生した場合にその影響やダメージを最小限にとどめるため、「情報開示」を基本とした関係者間における、迅速かつ適切なコミュニケーション活動。
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