自民党は7月7日、政調審議会・外交部会において採択された、中国による香港国家安全維持法の制定・施行を非難する一環で、習近平(シー・チンピン)国家主席の国賓来日について、“中止を要請せざるを得ない”と明記した決議案を了承した。これは、中国との友好関係を重視する二階俊博幹事長らの注文に配慮し、“中止を要請する”との原案から表現を弱めたものである。しかし、米メディアは、そのような内部事情は頓着せず、“与党・自民党が習国家主席来日中止を決定”と断定的表現で報道している。
7月8日付
『AP通信』:「日本の首相、習主席来日をキャンセルするよう要求される」
与党・自民党は7月7日、中国による香港国家安全維持法の施行を受けて、習国家主席の来日をキャンセルするよう安倍晋三政権に求めるとの決議を採択した。
中山泰秀自民党外交部会長は、“同法の制定・施行によって、香港の自由・人権・民主主義が脅かされると国際社会から強い懸念が表されていることから、習国家主席の国賓来日をキャンセルする以外考えられない”と決議につき説明した。...
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7月8日付
『AP通信』:「日本の首相、習主席来日をキャンセルするよう要求される」
与党・自民党は7月7日、中国による香港国家安全維持法の施行を受けて、習国家主席の来日をキャンセルするよう安倍晋三政権に求めるとの決議を採択した。
中山泰秀自民党外交部会長は、“同法の制定・施行によって、香港の自由・人権・民主主義が脅かされると国際社会から強い懸念が表されていることから、習国家主席の国賓来日をキャンセルする以外考えられない”と決議につき説明した。
これに対して、菅義偉官房長官は、習国家主席の来日等につき検討するのは適当な時期ではない、としただけで、(来日中止等)まだ何も決まっていないとのみコメントしている。
習国家主席の来日については、日中関係を新しいステージに上げるとの安倍首相の思惑もあり、昨年半ばのドナルド・トランプ大統領に続いて、二人目の国賓として招待することを決め、4月初めの来日とされていた。
しかし、折からの新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題深刻化に伴い、延期されていた。
ただ、当初から同党タカ派よりは、同国家主席を国賓招待すること自体に強い反対の声が上がっていた。
一方、中国側は、日本が香港国家安全維持法制定の動きに批判的なコメントを出した6月下旬の時点で、既に日本側対応を非難するコメントを出している。
7月7日付『ザ・ディプロマット』オンラインニュース:「中国公船による尖閣諸島領海内侵入が2012年以来最長となったのは何故?」
日中間で領有権争いのある尖閣諸島では、2012年に日本が同島を国有化宣言して以来、中国側の対応は厳しくなっている。
2013年には、中国が一方的に尖閣諸島を含む東シナ海に防空識別圏(ADIZ、注後記)を設定し、益々同海域での日中間の対立が先鋭化してきていた。
しかし、米中貿易紛争等を契機に米中対立が激化する中、中国側による米同盟国の日本との関係修復戦略もあってか、安倍首相が望んでいた日中関係改善政策が進捗し、習国家主席の国賓来日まで漕ぎ着けていた。
ただ、COVID-19問題で同国家主席の来日が延期となり、日中関係は停滞することとなった。
そして、直近では、中国による香港国家安全維持法制定に対して、欧米のみならず、日本も批判的コメントを出したことから、日中関係がまた後退することが懸念された。
かかる経緯を象徴してか、海上保安庁による発表では、先週、中国公船による尖閣諸島領海内侵入が約30時間と、2012年以来最長を記録したという。
そこで、タカ派の評論家からは、先週辺りから、与党・自民党内から習国家主席の訪日中止を求める声が上がっていることから、中国側が日中関係改善の話を見限って、再び東シナ海で強硬な対応に出てきたとみられるとのコメントが出ている。
しかし、これは偶然の話とみるのが自然で、中国としては、米中対立を契機に、米国と連携しようとしている豪州(二国間貿易でしっぺ返し)、インド(ヒマラヤ国境紛争地帯に部隊増派)等に対して強硬な態度で出ているように、中国の覇権主義の一環で、東シナ海でも妥協しない態度を示しておく必要がある、との中国判断とみるべきである。
(注)ADIZ:各国が防空上の必要性から領空とは別に設定した空域のこと。防空識別圏では、常時防空監視が行われ、(通常は)強制力はないが、予め飛行計画を提出せず、ここに進入する航空機には識別と証明を求める。更に、領空侵犯の危険がある航空機に対しては、軍事的予防措置などを行使することもある。
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