米国のゲーム業界の市場規模は1,200億ドル(約13兆円)と、ハリウッドや多くのスポーツ連盟よりも大きな市場と成長した業界だが、その業界でにわかに注目を集めているゲームがある。若干25歳のルアル・マイエン(Lual Mayen)さんがウガンダの難民キャンプで22年間過ごした自身の経験を基にした難民生活体験型ゲームである。
この若きゲーム開発者は、家族が南スーダンの第2次内戦から逃れるためにウガンダに向けて250マイル(400 km)を旅している際に生まれた。マイエンさんは
『フランス アンフォ』のインタビューで、「難民としてキャンプで育った私としては、世界の多くの人々は難民としての人生がどういうものなのかを分かっていないと感じている。だから私は世界中のプレイヤーが難民生活の現実を理解できるようにゲームを活用したい」と語っている。...
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この若きゲーム開発者は、家族が南スーダンの第2次内戦から逃れるためにウガンダに向けて250マイル(400 km)を旅している際に生まれた。マイエンさんは
『フランス アンフォ』のインタビューで、「難民としてキャンプで育った私としては、世界の多くの人々は難民としての人生がどういうものなのかを分かっていないと感じている。だから私は世界中のプレイヤーが難民生活の現実を理解できるようにゲームを活用したい」と語っている。
マイエンさんが開発したビデオゲーム「サラーム」は、アラビア語で平和を意味する挨拶のことば。戦争で荒廃した国から逃げ出すという体験がないプレイヤーが、銃撃をかわし、隠れ場所を探し、敵軍から身を隠しながら、十分な食料と水を探して「平和な環境」を目指す、という脱出の旅を仮想体験することができる。
『ロイター』に対し、マイエンさんは、自身の難民生活を振り返り、爆弾や野生動物の攻撃、世話をすることができなくなった親によって捨てられていく赤ちゃんなど、多くの家族が様々な苦しい体験をくぐらなければならない、「生と死の旅だった」と語っている。
マイエンさんは、映画を見るという受動的な体験とはちがって、自分で決定を下してく「ゲーミフィケーション」により、一般の人々が、難民が置かれる立場を体験することができると考えている。そしてプレイヤー達がこのゲームを通して、家を失うこと、空腹の日々、逃亡生活がどういうものなのか、よりよく理解してくれることを願っているという。
このゲームは無料で参加できるが、プレイヤーがゲームの中のキャラクターのために食べ物、水、薬を購入したい場合、アプリ内購入をする。そして購入したぶんが資金として現実の難民に行く仕組みになっている。
マイエンさんは「サラームは、仮想世界と現実をつなぐ初めてのゲームになる。」と説明している。「誰かがゲームで食べ物を買うとき、実際に難民キャンプの人の為に食べ物を購入してあげている。」
またマイエンさんの長期的ビジョンは、このゲームを体験した10代の若者たちが大人になり、政策を作る立場になった時、このゲームで遊んだことで難民が直面する問題を理解した上で政策を策定していくことができるようになることだ。「これが、実際に私たちが世界を変える方法であり、(ゲーム)業界を良いことの為に使用することができる。」と話し、「...大陸を代表し、社会的インパクトをもたらすゲームを代表できることは、私に大きな希望を与える」、「難民に希望を与える。」と語っている。
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