欧州連合(EU)の政策執行機関である欧州委員会は今週、新たなデジタル戦略を公表した。デジタル市場に関わる政策を見直し、域内の産業データを共有する単一市場を構築して、米国の巨大IT企業や国家の支援を受ける中国企業に対抗する企業の育成を目指す。
『ロイター通信』や技術紙などが20日までに報じたEUの新戦略は、デジタル市場に関わる政策刷新の一環であり、個人データ市場で圧倒的な強さを誇るグーグル、フェイスブック、アマゾンなどの米巨大IT企業のデータ支配力を抑え込むための施策が含まれる。
EUは、特にスマートフォン、ソーシャルメディア、電子商取引などの消費者市場でデジタル革命の最初の波に乗り遅れたため、産業分野で巻き返しを図り、域内企業が米国やアジアの競合企業が保有するデータに依存する事態を避けたいとの意向を強く持っている。...
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『ロイター通信』や技術紙などが20日までに報じたEUの新戦略は、デジタル市場に関わる政策刷新の一環であり、個人データ市場で圧倒的な強さを誇るグーグル、フェイスブック、アマゾンなどの米巨大IT企業のデータ支配力を抑え込むための施策が含まれる。
EUは、特にスマートフォン、ソーシャルメディア、電子商取引などの消費者市場でデジタル革命の最初の波に乗り遅れたため、産業分野で巻き返しを図り、域内企業が米国やアジアの競合企業が保有するデータに依存する事態を避けたいとの意向を強く持っている。産業分野の機械設備やシステムがいわゆる「モノのインターネット」により接続されている状況を活かし、ドイツのシーメンス、フランスのアルストムなどの欧州主要企業の産業データを蓄積・共有することで、次の技術革新の波では先頭に立ちたい考えだ。
欧州委員会で域内市場・産業・デジタル単一市場を担当するティエリー・ブルトン委員は記者会見で、「産業データのための戦いが今始まり、欧州が主戦場となるだろう。欧州には最大の産業基盤がある。今日の勝者が明日の勝者とはならない。」と述べた。
同委員は、戦略の鍵はEUクラウド・プラットフォームの構築であるとして、このために最大20億ユーロ(約2400億円)を調達したいと説明した。しかし、同委員はこのプラットフォームがどのように機能するのかについて、詳細を明らかにしなかった。
欧州委員会は、単一のデータ市場と並行して主要産業の分野毎の小規模なデータ市場の構築も計画している。新戦略のその他の施策としては、域内データセンターについて、2030年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの目標を掲げた。また、人工知能(AI)については、ますます多くの企業が利用する同技術の使用についての規則を設け、特にリスクの高い、医療、輸送、治安などの分野への適用を考えている。
世界各国でオンライン・プラットフォームを提供する巨大IT企業が、個人データ市場を支配している現状への批判に対応するため、欧州委員会は、巨大IT企業がデータへのアクセスや使用に関する条件を一方的に押し付けていることや、これにより過度な利益を得ることを阻止する規制の導入も検討している。
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