ドイツのプロサッカーリーグ、ブンデスリーガに所属するFCケルンが、中国・瀋陽のサッカー学校の運営から撤退した。これを受けて、多くの欧米メディアが、決定に際し人権問題への懸念があったのではないかと報じている。
『AFP通信』や英紙
『ガーディアン』などの報道によれば、ブンデスリーガのサッカークラブ、FCケルンは、中国北東部の瀋陽にある若い選手のためのサッカー学校を、180万ユーロ(約2億2000万円)で運営することとしていた。同サッカー学校の運営プロジェクトは、独中両国政府間の2016年の合意の一環であり、両国間の知識移転に重きを置き、2021年まで継続の予定だった。ケルンは中国の首都北京と姉妹都市の関係にある。
FCケルンのヴェルナー・ヴォルフ会長は18日、「我々は本プロジェクトを、現在のスポーツが置かれた状況に鑑み、継続しないことを決定した。」との声明を発表したが、この動きの背景に「リソースや優先順位」の再評価があったと説明している。
しかし、同クラブの元会長で、現在はファンクラブ会長を務めるシュテファン・ミュラーレーマー氏は地元紙に、「我々はスポーツで中国を必要としない。中国では人権が著しく軽視されている。」と非難し、同国は「(「1984年」の著者の)ジョージ・オーウェルが思い描いた以上にひどい全体監視国家を作り上げた。」などと述べた。同氏はさらに、「中国は我々のスポーツのノウハウを吸い上げたいと考えている。過去20年間ビジネスでしてきたのと同じだ。我が国の実業界の指導者たちが全くもって甘いからだ。」と指摘した。
ヴォルフ会長は、同氏の発言はあくまで個人的見解であり、クラブの立場を反映したものではないとしている。中国外務省の耿爽報道官も19日、「このドイツ人の発言は、ばかげている。」と定例の記者会見でコメントした。
本件が報道されるのに先立ち、英国のプレミアリーグのサッカークラブ、アーセナルでプレーする元ドイツ代表のメスト・エジル選手が、新疆ウイグル自治区での中国のウイグル人に対する扱いを批判し、中国では15日のアーセナルの試合の放送が中止された。また、エジル選手は、人気のサッカーゲームの中国版から姿を消している。
中国でレストランを経営するなど同国に商業的利益を持つアーセナルは、エジル選手の発言について、同サッカークラブは政治とは無縁であり、選手の個人的な意見にも関わらないと強調した。
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