2011年3月11日の東日本大震災と津波によって被災した福島第一原子力発電所の事故について、欧州地球科学連合(EGU)は12日、除染作業で放射線レベルは著しく低下したものの、作業を実施していない森林地帯にはまだ問題が残るとの研究結果を発表した。
『AFP通信』や科学技術紙などが報じた。福島第一原発の事故は、1986年に旧ソ連のチェルノブイリ原発で起きた炉心溶融(メルトダウン)事故に次ぐ大規模なものであり、広大な地域に放射線物質が飛び散った。これを受けて日本の関係当局は、最も汚染がひどい土地約9,000平方キロメートルで除染作業を実施した。除染作業の大半が終了したことに伴い、EGUはその効果を検証し、科学誌「ソイル(Soil)」に研究結果を公表した。
実施された除染作業では、土壌の最上層を表面から2インチ(約5センチ)削った。ソイルに掲載された除染方法に関する調査結果によれば、この方法により、今回の研究が注目した最も一般的な放射線源であるセシウム137の量を、約80%減らせることが分かった。
今回の国際研究を主導し、論文の筆頭執筆者となった仏ベルサイユ・サン・カンタン・アン・イブリーヌ大学気候科学・環境研究所のオリビエ・エブラール研究員は、この方法は、容易に立ち入り可能な地域では、セシウム137の処理に有効であることが判明していると説明した。また、セシウム137は「処理しなければ最長300年間環境内に残存する可能性があるため、住民にとって中長期的に最大のリスクとなる。」と述べた。
しかし、この除染方法には大きな問題もある。これまで少なくとも270億ドル(約3兆円)もの多額の費用がかかった。また、土壌の最上層を削った2000万立方メートルにも上る莫大な汚染土を、30年間は安全に保管した上で、最終的に処分しなければならない。
最大の懸念は、除染作業が農耕地や住宅地、また他の容易に立ち入りできる土地でしか実施されず、汚染地域の約4分の3を占める森林地帯での作業が未実施であることだ。研究者らは、森林地帯は、放射性物質がゆっくりと流れ出ていく間、実質的に放射能の貯留地として今後何年も機能すると警告した。そして、森林地帯での作業は現在未計画だが、今回の調査で、この問題に取り組むための協調行動の必要性が明らかになったと指摘した。
エブラール氏は、「福島の原発事故後の除染手続に関する評価は、そうした大規模な除染活動が初めてなされたため、前例のない中で行われた。福島の事故により、セシウムの環境からの除去など、除染技術の効果に関する貴重な見識が得られる。」と語っている。
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