インドは11月初め、東アジア地域包括的経済連携(RCEP、注後記)から離脱する意向だと発表した。これに驚いたのが、RCEP合意の主導権を握るべく競っていた日本と中国で、この程日本は、交渉担当の経済産業相をインドに送ってインドの翻意を促す交渉に当らせることになったと、米メディアも関心を持って報じている。
12月7日付
『サンフランシスコ・クロニクル』紙:「インドのRCEPからの離脱がほぼ決定的に」
インドが、RCEP交渉から離脱するとの決定が最終になりつつある。
RCEPは、東南アジア諸国連合(ASEAN)及び日本・中国・韓国他の計16ヵ国が設立を目指す、多国間自由貿易協定(FTA)である。
しかし、インドが今年11月初め、国益を優先するとの政府方針により、RCEPから離脱するとの意向を明らかにした。...
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12月7日付
『サンフランシスコ・クロニクル』紙:「インドのRCEPからの離脱がほぼ決定的に」
インドが、RCEP交渉から離脱するとの決定が最終になりつつある。
RCEPは、東南アジア諸国連合(ASEAN)及び日本・中国・韓国他の計16ヵ国が設立を目指す、多国間自由貿易協定(FTA)である。
しかし、インドが今年11月初め、国益を優先するとの政府方針により、RCEPから離脱するとの意向を明らかにした。
そこで、RCEP設立に向けて主導権を発揮しようと目論む日本は、インドの離脱方針転換に向けて説得工作に出る意向である。
12月6日の閣僚会議後の記者会見で梶山弘志経済産業相は、12月10~11日にインドを訪問して、直談判に臨む考えを明らかにした。
また、安倍晋三首相も12月15~17日にインドを訪問して、インド首脳に対してRCEP構想の交渉テーブルに戻るよう説得する意向とみられる。
当初、インドが11月4日にRCEPからの離脱意向を表明した際、他関係国は一様に、自国の交渉条件を有利に運ぶための戦略だと考えた。
しかし、最近になってインドが、正式にRCEP構想からの離脱に向けて最終決断をするとの見方が強くなってきた。
その背景には、もしインドがRCEPに加盟すると、中国から安価な製品がインドに雪崩のように流れ込んできて、せっかく成長の途にあるインド国内産業が大打撃を受けるとの懸念がある。
関係国首脳会議の席上でインドのナレンドラ・モディ首相は、現下の状況では、RCEPは単にインドの市場を荒らすだけとなり、インド独立の父である故マハトマ・ガンジー氏(1869~1948年)もRCEP加盟を許すまい、と表明した。
日本としては、13億人を抱えるインドはRCEPになくてはならない存在であり、万が一インドが加盟しないということになれば、中国のRCEP内での影響力が大きくなり過ぎる、と懸念しているとみられる。
一方、中国及びASEANの一部の国は、RCEPの早急なる合意が優先されると考えている模様で、インド抜きでのRCEP構想合意に向けて動き始めている。
(注)RCEP:ASEAN加盟10ヵ国に、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドの6ヶ国を含めた計16ヵ国でFTAを進める構想。従来、中国が2005年4月から提唱してきた「東アジア自由貿易圏」と、日本が2006年4月から提唱してきた「東アジア包括的経済連携」が併存しており、双方について、これまで、民間研究および政府間の検討作業が実施されてきた。2011年8月の日中共同提案を受け、同年11月に、ASEAN首脳は両構想を踏まえ、ASEANとFTAを締結しているFTAパートナー諸国とのRCEPを設立するためのプロセスを開始することで一致して現在に至る。
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