米・欧州連合(EU)間通商交渉は、昨年夏より1年余り続いているが進展はみられず、業を煮やしたトランプ政権は先月半ば、EUからの輸入品(航空機・ワイン・チーズ等)約75億ドル(約8170億円)相当に10~25%の報復関税を賦課することを決めた。そして次に取沙汰されるのが、EUにとって最大の輸出品である自動車・同部品への追加関税である。ただ、EU側発表によると、米国が対日通商交渉で見送ったと同様、同製品への追加関税賦課は先延ばしされることになったという。
11月12日付米
『ロイター通信』:「EU高官;トランプ政権がEU製自動車等への関税賦課を延期する見通しと発表」
EU高官が11月11日、トランプ政権がEU製自動車・同製品に関税を賦課するとの決定が半年余り先延ばしされる見通しだと語った。
トランプ政権は今年5月、冷戦時代に制定された米国通商拡大法232条(注後記)に基づき、EU製自動車及び同部品に最大25%の追加関税を賦課するか、11月14日までに決定すると発表していた。...
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11月12日付米
『ロイター通信』:「EU高官;トランプ政権がEU製自動車等への関税賦課を延期する見通しと発表」
EU高官が11月11日、トランプ政権がEU製自動車・同製品に関税を賦課するとの決定が半年余り先延ばしされる見通しだと語った。
トランプ政権は今年5月、冷戦時代に制定された米国通商拡大法232条(注後記)に基づき、EU製自動車及び同部品に最大25%の追加関税を賦課するか、11月14日までに決定すると発表していた。
同高官によると、トランプ政権が今週中に追加関税賦課を発動しない可能性につき打診を受けているとし、また、発動期限が更に半年先延ばしされるものと期待しているという。
米商務省のウィルバー・ロス長官は11月3日、日本、韓国のみならず、EUの自動車メーカーと“良好な交渉”が進んでいる限り、同法232条に基づく関税賦課は必要とならないとコメントしていた。
EU高官も、直近の数週間、ロバート・ライトハイザー米通商代表とセシリア・マルムストロームEU貿易担当委員との間の協議は頻繁に行われていて、交渉にかなり“進展”がみられていると付言している。
米国側はEUとの通商交渉において、米農産品のEU向け拡大を強く希望しているが、EU加盟国はこれに抵抗していて、EU交渉代表には工業製品に関わる関税や全般的通商規程に限っての交渉に留めるよう求めている。
一方、トランプ大統領は以前から、対ドイツ貿易赤字額が680億ドル(約7兆4120億円)、また対日貿易赤字が670億ドル(約7兆3,030億円)に上っていて、そのほとんどが自動車及び同部品取引によって占められていることに大きな不満を抱いていると非難している。
同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「トランプ大統領、EU製自動車・同部品への報復関税賦課の決定を延期か」
米情報筋の話によると、トランプ政権は今週、EU製自動車・同部品に関わる報復関税を賦課する決定を更に半年延期する見込みだという。
米国務省のマイク・ポンペオ長官は先週、EUとの通商において如何なる関税障壁がないことが望ましいとした上で、米・EU双方にとって有益となる形を通してEU向け貿易高が増えることに期待すると発言している。
なお、米国は日本との通商交渉で今年9月末、農産品と工業製品の関税低減を条件として協定を成立させており、交渉に当ったライトハイザー米通商代表は、協定締結に伴い、トランプ大統領は日本製自動車及び同部品への関税賦課は実施しないだろうと語っている。
(注)米国通商拡大法232条:1962年に制定された法律で、ある産品の米国への輸入が米国の国家安全保障を損なうおそれがある場合、関税の引き上げ等の是正措置を発動する権限を大統領に付与する規定。2017年1月にトランプ政権が成立して以降、米国商務省は現在まで、鉄鋼製品、アルミ製品、自動車・自動車部品、ウランの4品目に関し、232条に基づく調査を開始していて、既に鉄鋼製品、アルミ製品には追加関税賦課を決定・通知している。
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