インドは4日、アジアで巨大な自由貿易圏の構築を目指す「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」への参加を見送った。RCEPは参加国に段階的な関税撤廃を義務付けており、インドは中国からの安価な製品などの流入により自国市場が損なわれると懸念していた。
『AFP通信』や
『ロイター通信』などの報道によれば、タイのバンコクで4日に行われたRCEPの首脳会議後、インド外務省のビジェイ・タクール・シン東アジア担当局長は記者会見し、「我々は参加国らに対し、RCEPに参加しないと伝えた。」と述べた。シン氏はその上で、「我々の決定は、この協定がインドの一般国民と最貧層も含めた人々の生活に与える影響によるものである。」と説明した。
RCEPが当初の予定どおり実現すれば、世界の国内総生産(GDP)合計の約30%、世界人口の約半分を占める巨大な経済圏が誕生する筈だった。...
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『AFP通信』や
『ロイター通信』などの報道によれば、タイのバンコクで4日に行われたRCEPの首脳会議後、インド外務省のビジェイ・タクール・シン東アジア担当局長は記者会見し、「我々は参加国らに対し、RCEPに参加しないと伝えた。」と述べた。シン氏はその上で、「我々の決定は、この協定がインドの一般国民と最貧層も含めた人々の生活に与える影響によるものである。」と説明した。
RCEPが当初の予定どおり実現すれば、世界の国内総生産(GDP)合計の約30%、世界人口の約半分を占める巨大な経済圏が誕生する筈だった。インド国内でも、協定を支持する政府当局者や企業グループは、インドの産業がハイテク製品などのグローバルな供給網に取り込まれることや、海外市場への進出の加速化などの大きな利点が得られ、国内市場が受ける不利益は相殺されると主張していた。
しかしながら、インドのモディ首相は、小規模な貿易商を営む保守的なヒンズー教徒などの自身の支持基盤や野党などからの強い反対に直面し、RCEP首脳会議で「全てのインド国民の利益を考慮すると、積極的な答えは見出せない。」と懸念を表明した。
RCEPは参加国に段階的な関税撤廃を義務付けている。インドは中国製の安価な製品や、オーストラリア、ニュージーランド産の安価な農産品などが大量に流入し、国内産業が大きな打撃を受けることを警戒し、参加を断念することとした。
モディ首相は、RCEP参加により、インドが海外市場進出や非関税障壁の撤廃の恩恵を受ける保証はないと指摘した。インドは2018~19年、中国との間に530億ドル(約5兆7600億円)の貿易赤字を抱え、RCEPで輸入が急増することの無いよう、保護措置の導入を求めたが、保護貿易は首脳会議での主要問題でもあり、協定署名を見送ったという。
インドの不参加によりRCEP参加国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟の10カ国に、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドを加えた15カ国となる。米国は含まれない。参加国は、インドの将来的な参加については否定せず、目標とした年内の最終的妥結を断念し、合意した草案を精査の上で来年の署名を目指すことで一致した。
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