米航空機大手ボーイングと独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)傘下の高級スポーツ車メーカーのポルシェは10日、都市部での空の移動を想定した交通分野で提携すると発表した。両社の強みを活かし、空飛ぶ高級車の共同開発なども展望する。
『ロイター通信』や米
『CNN』『ブルームバーグ』などによると、両社の提携は、都市部における空の移動手段の市場を開拓するためであり、垂直に離発着し完全に電動で空中を移動する乗り物、即ち空飛ぶ電気自動車(EV)の開発を目指すものである。提携には、空飛ぶ高級車の潜在市場を分析し、人口の多い都市内での利用の可能性について検討していくことなども含まれる。両社の発表では、提携プロジェクトに投資する予定の金額や、空飛ぶEVの完成時期、価格帯などの詳細は示されていない。
ボーイングは今年に入り、既に垂直に離発着が可能な自動操縦の空飛ぶ車の試作機を発表し、初の試験飛行に成功した。試作機は2~4人の乗客を乗せて、50マイル(約80キロメートル)の距離を飛行することができるよう設計されている。
空飛ぶ車の開発は、同社の最大のライバルである欧州航空機大手エアバスなども進めており、今後の競争が激化しそうだ。エアバスは、VWグループの高級自動車メーカー、アウディと提携し、自動操縦の空飛ぶ車の試作機を製造し発表した。同機は空中移動ばかりでなく、陸上走行も可能である。
ポルシェなどを傘下に持つVWは世界最大の自動車メーカーであり、今後10年間に同社グループのブランドによるEVを2200万台製造する目標を掲げるなど、事業の軸足をEV開発に移していくことを表明している。ポルシェは空飛ぶEVを、タクシーやライドシェア・サービスの用途で開発することを目指している。
ポルシェの営業・マーケティング担当役員のデトレフ・フォン・プラテン氏は、「世界的な主要企業である2社が各々の強みを持ち寄り、未来の潜在的な重要市場に対応する。」と述べ、提携は長期的に3次元の移動手段の開発を目指していくことになると説明した。
ボーイング、VW両社が現在置かれている状況は非常に厳しい。ボーイングの収益は2018年に初めて1000億ドル(約10兆8000億円)を上回ったが、737MAX型機の2度の墜落事故により合計346人が死亡したことを受けて、今年は急減する見込みだ。VWは、ディーゼル車の排ガス不正問題により、そのブランドイメージが大きく損なわれた。
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