シンガポール保健省は10日、砂糖を非常に多く含む飲料の広告を全面的に禁止する方針を発表した。糖尿病などを防止する健康対策の一環であり、これが実施されれば世界初の厳格な取り組みになると注目されている。
地元紙
『ストレーツ・タイムズ』のほか
『ロイター通信』や
『ブルームバーグ』などが報じた。同方針はエドウィン・トン上級国務相(保健担当)が保健関連の会議で明らかにした。対策の詳細は来年発表の予定であり、実施に1~4年を要すると見込まれている。
ストレーツ・タイムズによれば、砂糖含有量が非常に多い飲料の広告の全面禁止は、世界初の取り組みだという。同国の対策は、英国やメキシコなど他国のものよりさらに厳格である。他国では、高カロリーの食品や飲料の広告は、子どもの視聴を限定するため、テレビ放映が可能な時間を制限しているが、シンガポールの広告禁止の対象には、テレビ・ラジオ放送、印刷媒体、インターネットなど全ての地元メディアが含まれる。
トン上級国務相はまた、砂糖の含有量が極度に多い飲料ばかりでなく、砂糖が多めの商品についても、パッケージ前面にラベルを貼付し、不健康である点を警告することも義務付けると説明した。砂糖含有量の多い飲料メーカーや輸入業者への課税、そうした飲料の販売の全面禁止なども検討の対象に挙げられている。
シンガポールやマレーシアなどの東南アジア諸国は、世界で1人当たりの砂糖消費量が最も多い地域の1つであり、アジアでもシンガポールの消費量はトップクラスだ。他の先進国同様、それが糖尿病や肥満などの健康問題の深刻化につながっている。糖尿病を抱える人の割合は世界最高水準となっており、糖分の過剰摂取の抑制は喫緊の課題である。
さらにシンガポールでは、国民の高齢化が急速に進み、65歳以上の人口は、今後10年で倍増するという。トン氏は、「政府が介入しなければ、国民の急速な高齢化と慢性疾患の有病率の上昇により、保健医療制度は持続不可能で高額なものとなる。」と指摘した。
シンガポールは国民の健康増進のため、様々な政策を採用してきた。2017年には、ソフトドリンクのメーカーに対し、国内で販売される飲料の砂糖含有量を減らすよう規制を設けた。また、喫煙対策も実施しており、1970年代から公共の場所などでの禁煙を進め、その後順次実施範囲を拡大するなどしている。
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