ロシア極北の軍事基地内の実験場で、7人の犠牲者を出す爆発事故が8月8日に発生した。ドナルド・トランプ大統領は、ロシアが開発中の原子力推進巡航ミサイルの実験失敗による事故だと発言している。しかし、ロシア側は事故発生は認めたものの、実験内容についてはコメントを控えた。更に、ロシア政府は、事故後の放射線量が異常値まで上昇した可能性があるとの指摘に対して、異常値は感知されていないとした上で、国連傘下の放射性物質観測施設による爆発事故後の放射線物質の観測データを隠蔽しようとする動きをしている。
8月20日付米
『ロイター通信』:「ロシア政府、実験中の爆発事故について、国連傘下の放射線物質監視機関の関わりを拒絶」
ロシア非政府系メディア『インテルファクス通信』は8月20日、ロシア政府が、8月初めにロシア極北の軍事基地で発生した爆発事故に関し、事故後の放射線量観測データ提供を求める国連傘下の放射性物質監視機関に対して、データ供給の義務はないと一蹴したと報じた。
国連傘下の包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO、注後記)は8月19日、ロシア国内に設置されている4つの放射性物質観測施設が、爆発事故後に通信障害を起こしているため、放射線量のデータが取得できないと発表した。...
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8月20日付米
『ロイター通信』:「ロシア政府、実験中の爆発事故について、国連傘下の放射線物質監視機関の関わりを拒絶」
ロシア非政府系メディア『インテルファクス通信』は8月20日、ロシア政府が、8月初めにロシア極北の軍事基地で発生した爆発事故に関し、事故後の放射線量観測データ提供を求める国連傘下の放射性物質監視機関に対して、データ供給の義務はないと一蹴したと報じた。
国連傘下の包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO、注後記)は8月19日、ロシア国内に設置されている4つの放射性物質観測施設が、爆発事故後に通信障害を起こしているため、放射線量のデータが取得できないと発表した。
このため、ロシア政府がデータ隠蔽を図っている疑いがあるとの非難の声が上がっている。
ロシア国営原子力企業ロスアトムは、8月8日にロケットエンジン噴射実験中に発生した爆発事故によって、原子力専門家5人が犠牲になったと認めている。
また、ロシア軍関係者も2人犠牲になっている。
事故発生後、ロシア水分気象環境監視局が、爆発事故を起こした極北のニョノク実験場に近いセベロドビンスク市では、事故直後の放射線量が自然放射線量の最大16倍を記録したと発表していた。
しかし、『インテルファクス通信』によると、セルゲイ・リャブコフ外務副大臣が、データ通信障害は今回の爆発事故と一切関係ないとした上で、そもそもCTBTOに放射線量データを提出する義務はなく、提出するかどうかは全て当該国の任意であると強調したという。
更に同副大臣は、CTBTOの活動は武器開発には関われないとも付言したとする。
一方、ウラジーミル・プーチン大統領も8月19日、事故に伴う放射線量の上昇値は何らリスクを伴いものではないとした上で、安全対策に万全を期していると表明した。
同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「ロシア政府、爆発事故に伴う“放射能雲”発生の噂は馬鹿げた話と一蹴」
ロシア大統領府のドミートリィ・ペスコフ報道官は8月20日、ロシア極北のアルハンゲリスク州で8月8日に発生した液体燃料ロケットエンジン噴射実験時の爆発事故に関し、事故後に“放射能雲”が発生しているとの噂を馬鹿げた話だとして一蹴した。
更に同報道官は、8月19日のプーチン大統領が表明したとおり、実験場周辺の放射線量は異常となっておらず、また、ロシア市民の健康と安全は十分保障されていると、再度強調している。
(注)CTBTO:1996年に国連総会で採択された「包括的核実験禁止条約(CTBT)」は、核技術保有44ヵ国のうち8ヵ国が未批准のため発効していない。ウィーン(オーストリア)に本部を構える当準備委員会は、CTBTの検証制度を構築し、条約の批准を促進し、かつ、条約発効次第すぐにも運用できる体制作りをする任務を果たしている。なお、CTBT検証制度は、核爆発の兆候を監視する337ヵ所の施設を持つ地球的規模のネットワーク、処理と分析のための国際データ・センター、疑わしい出来事があった場合に地上で証拠を収集する現地査察、から構成される。
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