パキスタン政府は7日、インドがパキスタンと領有権を争うカシミール地方の支配を強化していることを受けて、インドとの外交関係を格下げし、同国の駐パキスタン大使を国外に追放するとともに、二国間貿易を停止するなどの方針を明らかにした。
『ロイター通信』や
『AFP通信』、米
『CNN』など多くのメディアが報じた。カシミール地方は、インドとパキスタンの1947年の独立以降、両国と中国がそれぞれ部分的に実効支配し、分断されてきた。インド・パキスタン両国間では、カシミール地方の領有権をめぐる2度の戦争が行われており、インド・中国間の紛争も起きている。
インド政府は5日、実効支配する北部ジャム・カシミール州に70年にわたり認めてきた特別自治権を大統領令によって剥奪した。同州はインドで唯一、イスラム教徒が多数派を占める州であり、独自の法律の制定や、土地の購入や政府機関での就業を地元住民に限定するなど、特別な自治権が認められてきた。
インド政府は今回、同州にこうした特別な地位と権力を認めてきた憲法370条を廃止し、直轄領とした。ヒンドゥー至上主義を掲げるインドのモディ政権はかねてから、特別自治権がカシミール地方の開発を妨げているとして370条を廃止し、同地方を国内の他の地域と完全に統合したいと考えてきた。
カシミール地方の領有権を同様に主張しているパキスタンと中国は、これに強く反発している。インド政府は、国内問題であるとしているが、パキスタン政府は、民族浄化の恐れもあると非難するとともに、国際社会に介入を求め、この問題を国連の安全保障理事会に持ち込むこととしており、カシミールをめぐる対立は激化している。
パキスタンのカーン首相は7日、国家安全保障委員会を開催し、対抗措置を打ち出した。同委員会では、インドとの外交関係の格下げ、二国間貿易の停止、二国間協定の見直し、国連・安全保障理事会での本問題の取り扱いなどが決定された。インドの駐パキスタン大使は本国に送還し、パキスタンが新たに任命した駐インド大使も着任を控えるという。
カーン首相は、「全ての外交チャネルを駆使し、インドの野蛮な人種差別主義の体制や人権侵害などを白日の下にさらす。」と声明で述べた。また、自国の軍隊に対し、警戒を続けるよう命じた。
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