タイ外務省の報道官によれば、31日には南シナ海の問題が話し合われ、複数の出席者から中国を批判する意見が出されたという。南シナ海では、6月から7月にかけて中国が対艦ミサイルの発射実験を行ったことが明らかになり、緊張が続いている。会議の終わりには共同声明が出される予定になっており、その中では、南シナ海で中国が進める人工島建設などの活動がASEANと中国の信頼関係を傷つけ、緊張を高めていることへの懸念が表明される見込みだ。一方、ASEANと中国との間で、緊張に対処するための行動規範を策定する交渉が進展したことを歓迎する内容も盛り込まれると予想されている。この行動規範は2021年までに制定されることが期待されている。
中国は南シナ海全域の主権を主張しており、ここ数年で、他国も主権を主張している多くの岩礁などを埋め立て、空港や他の軍事施設などの建設を進めている。ASEANとの会合を受けて、中国の王毅外相は31日、ASEANと中国の間で進められている、南シナ海を管理するための行動規範の検討作業の第一段階が終了したことを明かし、「行動規範を3年以内に完成させるという目標に向けた重要なステップとなった」と意義を強調した。「ASEANと中国双方が、話し合いを前進させる強い決意を持って」おり、すでに「文言の整理と内容の構成を整理した」と述べた。また、「これは各参加者の努力のたまものだ。参加国の誠意もあり、前倒しで策定できるかもしれない。今回の進展により検討作業のための一層の時間が生まれ、また、今回の進展によって、南シナ海の平和のためのルール作りへの自信と確信が強まった」とも語った。一方、王外相はASEANと中国との間の貿易が拡大していることも強調した。「昨年、中国からASEANへの投資は100億米ドル(約1兆800億円)近くに上り、中国からの投資先として、ASEANが初めて2番目の規模となった」と語った。
ただ、王外相からは域外の国々をけん制する発言も見られた。米国やアジア以外の国々が南シナ海問題に関与することへの見解を問われ、「域外の国々は、意見の食い違いを深めるようなことをするべきではない」とし、「中国とASEANの間に不信を植え付けるために、中国とASEANの間の見解の相違を利用するようなことはするべきではない」と述べた。さらにASEAN諸国との共同軍事演習を拡大し、さらに制度化することについてもASEANと協議中だと語った。
『ロイター』では南シナ海での緊張について、複数の専門家の見解も伝えている。それによれば、南シナ海において7月、中国とベトナムの艦船がにらみ合いになったことが、米国が中国への圧力を強めるきっかけとなるかもしれない、という。一方、中国については、米国との貿易摩擦、香港での抗議活動などの状況を考えれば、中国は南シナ海問題を悪化させたいとは考えていないだろう、という指摘もある。フィリピン大学の専門家は「中国がより懸念していると思われるのは、中国の行動に対して米国が国際的な支援を結集させようとするかどうか、ということだろう」と語っている。
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