参議院選挙の投票日を迎え、海外メディアも与党・野党の攻防の行方を占っている。その中で、米メディアが、野党側が言及している、夫婦同姓を義務付ける民法規程を改正し、選択的夫婦別姓制度の導入の主張について触れている。日本は、夫婦同姓(注後記)を義務付けている唯一の国であることから、国連の女子差別撤廃委員会から度重なる是正勧告を受けていることもあって、より注目されたものとみられる。
7月20日付
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「日本の女性、夫婦別姓を勝ち取るべく奮闘」
日本の女性は現在、日本の民法規定による夫婦同姓義務に伴い、婚姻によって、自身の姓を捨てざるを得ないことから、築いてきたキャリア・評判に少なからぬ影響が出ることを恐れている。
日本では毎年約60万組が結婚するが、ほとんどが夫側の姓を名乗り、妻側の姓を採用するのは僅か4%(約2万4千組)である。...
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7月20日付
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「日本の女性、夫婦別姓を勝ち取るべく奮闘」
日本の女性は現在、日本の民法規定による夫婦同姓義務に伴い、婚姻によって、自身の姓を捨てざるを得ないことから、築いてきたキャリア・評判に少なからぬ影響が出ることを恐れている。
日本では毎年約60万組が結婚するが、ほとんどが夫側の姓を名乗り、妻側の姓を採用するのは僅か4%(約2万4千組)である。
ある女性は、婚姻によって一方の姓を捨てさせられるのは、“人権侵害以外の何ものでもない”と主張する。
そして、この夫婦同姓義務問題が、参議院選挙期間中に大きく注目されている。
すなわち、7月21日の投票の結果、もし野党勢力が同院での勢力拡大に繋げられれば、性差別の問題に消極的な与党・自民党への圧力となるかも知れないからである。
今月初めの党首討論会で、自民党の安倍晋三党首のみが、夫婦同姓義務の民法規程の改定の可能性について、賛成と表明しなかった。
自民党の青山繁晴参議院議員は、伝統を守ることが大切だとするならば、夫婦同姓を謳う規程を改定する必要はない、と主張する。
しかし、伝統について紐解くと、日本の人たち、主に平民は、明治時代以前は名字を持っておらず、1898年制定の現行民法で初めて名字を名乗ることが許されたに過ぎない。
そして1948年に、婚姻の場合の夫婦同姓が法律によって義務付けられたが、夫側、妻側、どちらを選択するかは任意であった。
ただ、それ以降、夫側の姓を名乗ることが主流となって現在に至った訳である。
なお、この結果、すなわち、婚姻によって妻側の姓を選択するのが僅か4%という事態と相俟って、日本における女性の権利が男性に劣後する状況が蔓延している。
企業内の女性管理職は僅か4%、取締役においては更に少なく2%、衆議院議員における女性議員も10%に過ぎない。
更に、世界的に広がりを見せた#MeToo運動(セク・ハラ告発運動)においても、日本では大きなうねりとなっていない。
以上の数値を以て、経済協力開発機構(OECD)加盟国中、日本は男女の賃金差がワースト3の国と評価されている。
なお、昨年実施された世論調査では、42.5%の成人が夫婦同姓義務規程の改定に賛成していて、5年前の数値より+7%増えている。反対者は29.3%であった。
(注)夫婦同姓:婚姻時に両者の姓を統一する婚姻及び家族形態で、民法750条によって規定。以前、ドイツ・オーストリア・スイス・トルコ・タイでも夫婦同姓が規定されていたが、2014年以降も同規定が存する国家は日本のみ。2003年以降、同規定が「差別的な規定」であるとして、国連の女子差別撤廃委員会より度重なる是正勧告を受けている。
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