『ロイター』によれば、この「平和と繁栄」への計画は、ホワイトハウスの上級顧問のクシュナー氏が、今週25日と26日にバーレーンで開催される会議で提示するという。この計画には、179のインフラ投資と経済開発のプロジェクトが含まれている。この計画は、数年来停滞しているイスラエル・パレスチナ間の和平交渉の再活性化への取り組みのひとつだが、この野心的な計画は、まずは政治的な解決策で合意した後にのみ、実施されるという。
計画では、まず500億ドルの50%以上を、経済的に苦境にあるパレスチナ地域に10年にわたって投資。その他の資金はエジプト、レバノン、ヨルダンに投資されるという。計画の中では、10億ドル近い資金をパレスチナの観光業のために投資することも盛り込まれている。しかし、イスラエルとガザ地区での衝突が繰り返され、ガザ地区西岸の安全確保が難しい中、ほぼ実行不可能な提案だとみられる。
クシュナー氏は、このアプローチの狙いとして、和平交渉のテーブルに戻ることによって繁栄を築くことができるということを、経済的に魅力ある計画を示すことを通じてパレスチナ側に訴えることだ、と語っている。クシュナー氏はまた「トランプ政権としては、資金力のある湾岸諸国、欧州、アジアの各国、また民間の投資家も含めて、参加してくれることを期待している」と語った。
米国主導で進められるバーレーンの会議には、複数のパレスチナの企業トップが参加するとクシュナー氏は説明したが、具体的な名前は明らかにしなかった。一方現地紙は、パレスチナ経済界の圧倒的多数は参加を見送っていると『ロイター』に語った。
サウジアラビアも含めた湾岸諸国の一部も会議に出席する予定とされている。しかし複数の米国当局者が個人の見解として語ったところによると、「トランプ大統領が湾岸諸国の大敵であるイランに対して強硬姿勢を取る中、参加者はある意味トランプ大統領のご機嫌をとる狙いで出席するように見える」という。
ただ、本質的な問題として、数十年にわたるパレスチナ問題の政治的な着地点が見えない中、各国が資金を供給するかは疑わしい。
パレスチナ自治政府の高官アシュラウィ氏はこの提案について、「抽象的な約束にすぎない。政治的な解決策を見つけることが紛争の唯一の解決策だ」と述べた。また、パレスチナの当局者は、米国による仲介努力がイスラエルに肩入れしすぎているとして、米国主導の和平への取り組みを拒んでいる。また、多くの専門家は、政治的な対話のステップを踏まずに経済を第一に優先するクシュナー氏の取り組みは紛争の現実を無視している、と語っている。
『ABC』はこの提案について、「バーレーンの会議には、イスラエルとパレスチナ双方とも公式な参加を見送っており、また他の国々からも熱意が感じられない」と伝えている。また、「この計画の政治的な狙いが明確でなく、また米国とイランとの間の緊張から目をそらさせるのが狙いではないかという疑念もあり、期待は全く広がっていない。トランプ大統領の娘婿であるクシュナー氏は、賛同を集めるのに苦労するだろう」とも報じている。
パレスチナの投資ファンドのトップは「確かに我々はインフラ構築、投資、観光業の強化、を必要としている。しかしイスラエルによる占領を終わらせるのが先だ。」と語った。
米国メリーランド大学の教授は、「この提案はパレスチナ側が過去拒否した条件を受け入れさせるために、別の利益を目の前にぶら下げているに過ぎない。パレスチナ側が受け入れられない条件を受け入れさせようとする魚釣りの疑似餌のようなもので、うまく行かないだろう。不可能だ。」と指摘した。
さらに『CNN』も、パレスチナ側、イスラエル側双方の関係者の声を紹介している。
パレスチナ自治政府の高官アシュラウィ氏は、この提案を否定し、「まず、ガザの封鎖を解くこと、イスラエルが土地、資源、資金を奪うのを止めること、移動の自由を認め、国境管理、航空管制、水利の管理権を我々のもとに返すこと、などが第一だ。」とツイートとした。パレスチナ側の関係者は、「経済的な主権が最も重要だ」と一蹴した。パレスチナの別の関係者は、まず経済的な提案を公表するという今回のアプローチについて批判し、トランプ政権はパレスチナ側を買収し、パレスチナ側の和平条件を引き下げようとしている、という厳しい見方を示した。
イスラエル野党関係者は、「パレスチナ側を交渉のテーブルに着かせるための建設的な提案だ」としつつ、「イスラエル、パレスチナ双方の政治指導者を見れば、実現性には疑問がある」と語った。また、アラブ各国が資金を提供するかどうかについても「我々の経験からすると、彼らはイエスと言うだろう。そして立ち去るだろう」と語った。
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