国連貿易開発会議(UNCTAD)は12日、2018年の世界の海外直接投資(FDI)が前年比13%減の1兆3000億ドル(約140兆円)だったと発表した。米政権の税制改革や貿易政策、英国の欧州連合(EU)離脱の不透明感など、政治的要素が大きく影響したという。
UNCTADの発表を受けて、
『ロイター通信』ほか各国メディアが報じた。FDIの減少は3年連続となる。2019年は10%の回復を予想しているが、投資意欲を削いだ一部の要因は継続しており、大国間での技術競争が収束する兆候も見られないため、状況はかなり不透明であるとしている。UNCTADのムキサ・キトゥイ事務局長は、米中関係に触れて、「技術競争の根底にある冷戦は、今後数年間は終わらないだろう。」と記者団に語った。
FDIは、国境を超える企業の合併・買収(M&A)や海外の新規事業への投資などを含むが、グローバリゼーションを推進し、企業のサプライチェーンの確立や将来の貿易関係強化の可能性を示すものである。
2018年の先進国へのFDI流入額の総計は5570億ドル(約60兆円)で、2004年以降で最低の水準にまで減少した。一方、発展途上国への流入額が総額に占める割合は、過去最高の54%だった。FDI流入が最も多かったのは米国で、中国、香港、シンガポールの順となっている。逆に海外への投資が最も多かったのは日本で、中国、フランスが続いた。
UNCADの投資責任者ジェームズ・ザーン氏は、米企業が海外のプロジェクトなどから得た利益を本国に還流させるよう促すトランプ政権の税制改革など、国家の政策が、経済的な要因以上にFDIへの支出にブレーキをかけていると指摘した。
米国や中国などの大国が国家安全保障上の理由や、戦略的な新興産業での優位性を確保するために投資案件を阻止したことも大きく影響した。UNCTADは、昨年5000万ドル(約54億円)以上の投資案件22件がこうした理由で阻まれ、その価値は総額1500億ドル(約16.2兆円)に上り、世界のFDIの12%に相当すると試算した。米中貿易戦争による世界的な資産再編もFDIの減少要因となり、中国へのFDI流入額は最終的に前年比4%増となったが、多くの輸出企業が中国から東南アジア諸国やインドに拠点を移すなどした。
英国のEUからの離脱問題の影響も大きかった。ザーン氏は、「英国への投資の流れが昨年は36%減少したが、その影響は英国だけにとどまらない。その過程が予測不可能性を生み、それがEU市場全体に影響することになる。」と説明した。
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