欧州連合(EU)は先週17日、ネットワークに侵入し、重要インフラを破壊したり、企業の機密情報を窃取したりするサイバー攻撃に関与した域外の個人や企業、国家機関などに対し、制裁を科すことを決定した。
『ロイター通信』『AFP通信』などが報じたEUの制裁に関する枠組みでは、サイバー攻撃が標的に重大な影響をもたらした場合、関与した個人や企業、国家機関などに対し、域内の資産凍結や加盟国への渡航禁止などの制裁措置が取られる。加盟国だけでなく、第三国や国際機関が攻撃を受けた際にも適用され、通信や運輸など重要インフラの破壊や選挙妨害、企業秘密や資金の窃取などを狙ったサイバー攻撃に対し、加盟各国が早期に手を打つことが可能になるという。
新たな制裁の枠組みは、英国とオランダが強く求めていたものだ。当初イタリアが抵抗を示していたが、加盟28カ国の閣僚がベルギーのブリュッセルで会談して合意に達し、サイバー攻撃に制裁を科すことを初めて可能とした。ジェレミー・ハント英外相は、「これは将来のサイバー攻撃を阻止するための断固たる措置だ。」との声明を出している。
5月23~26日の欧州議会選を直前に控え、EU加盟各国の当局は、偽情報の宣伝活動やサイバー攻撃によって選挙を妨害するいかなる動きに対しても警戒する態勢を敷いている。今回の制裁の枠組みはロシアなどを念頭に置いたもので、欧州議会選への介入も対象となる見込みだ。
欧米諸国の当局は、ロシアはサイバー空間上での攻撃や電子的な闘いを主要な軍事活動の一部としていると認識しており、英国、オランダ、そして米国は、ロシア政府が各国に対する大々的なハッキング活動を展開していると非難した。
EUと北大西洋条約機構(NATO)の外交官らは、ロシアのほか中国や北朝鮮が、精巧なコンピュータ・ハッキング技術やサイバー空間の監視ソフトを開発し、しばしば攻撃の首謀者がわからないように犯罪者集団を使い、西欧諸国にスパイ活動や妨害行為をしかけてきたと主張している。
今回のEUのサイバー攻撃に関する制裁は、化学兵器の使用者を国籍に関わらず罰することができるように設けた枠組みに倣ったものだ。また人権侵害者への制裁の枠組みも設けられている。
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