米紙ニューヨーク・タイムズは14日、中国当局が、イスラム教徒の少数民族ウイグル人を国内全域で追跡・監視するため、大規模で高度な顔認証システムを密かに使用しているとの記事を掲載した。
『AFP通信』『ニューヨーク・ポスト』などのメディアが、ニューヨーク・タイムズ紙の報道について伝えた。同紙は14日の記事で、中国が全国に張りめぐらした巨大な監視カメラ網には、顔認証技術を利用したシステムが搭載され、外観や容貌などに基づいてウイグル人だけを追跡し、国内での活動記録を取って監視するよう設計されていると報じた。
中国は既に、新疆ウイグル自治区のウイグル人の扱いをめぐり、世界各国から厳しい批判を受けている。国連の専門委員会は昨年8月、同地区で最大100万人のチュルク語を話すイスラム教徒の少数民族が、強制収容所で拘束されていると報告した。これに対し中国は、恣意的に収容所に拘束したのではなく、同地域でのイスラム過激派によるテロ対策の一環として、教育的な訓練所を運営しているだけであると訴え、人権抑圧を否定した。
中国政府は2017年、同国の人工知能(AI)産業を世界のトップ水準とするとの野心的な計画を発表した。しかし近年、同国内の民族間の激しい緊張状態により、国際社会は、先端技術が警察による大規模な監視に用いられるのではないかとの懸念を強めている。
ニューヨーク・タイムズの記事は、警察は現在AI技術を使用し、浙江省の杭州や温州といった裕福な都市など、新疆ウイグル自治区以外でもウイグル人を追跡していると報じた。ある都市では、住民がウイグル人かどうかを特定するために、1カ月に50万回もの機械読み取りが行われたとしている。
ニューヨーク・タイムズは、同顔認証システムに詳しい5人の関係者のインタビューや、警察が使用しているデータベースに関する調査、中国政府の機器調達記録、システムを開発した企業の宣伝広告などにより、中国がAIを活用して民族的な調査を行っていることを明らかにした。
同紙はまた、中国政府がAIを利用して民族的な調査をするのは、これまで判明している限り、これが初めての例だとする専門家の見解を紹介した。顔認識技術を利用した新システムの導入は、中国国内の諸都市で期待されていたという。
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