「平成」の次の新元号が1週間後に明らかになり、その1ヵ月後の5月1日に「新元号元年」を迎える。
役所や銀行などの文書等に元号が使われているが、ビジネス文書や一般社会では圧倒的に西暦使用が多数派である。
世界でも、太陽暦で表す西暦が広く使われている。
イスラム暦(太陰暦)を採用する中東諸国では、断食月(ラマダーン)はイスラム暦第9月とされ、太陽暦の西暦と年々ずれても、そのままの慣習を続けているが、通常は西暦ベースと聞く。...
全部読む
「平成」の次の新元号が1週間後に明らかになり、その1ヵ月後の5月1日に「新元号元年」を迎える。
役所や銀行などの文書等に元号が使われているが、ビジネス文書や一般社会では圧倒的に西暦使用が多数派である。
世界でも、太陽暦で表す西暦が広く使われている。
イスラム暦(太陰暦)を採用する中東諸国では、断食月(ラマダーン)はイスラム暦第9月とされ、太陽暦の西暦と年々ずれても、そのままの慣習を続けているが、通常は西暦ベースと聞く。
同様、中国暦(太陰太陽暦)を用いる中国も、春節(旧正月)が西暦でいくと毎年ずれてしまうが、毎年独自にその習慣を祝っている。ただ、西暦を中心に物事が進められている。
以上からすると、西暦をベースとしながら、同時に元号で年号を表記しているのは日本くらいかも知れない。
世界中の人々は、日本の元号についてほとんど知識がないとみられる。
政府方針に基づく諸政策のお蔭で、訪日外国人数が急増しているが、来日する多くの外国人は、元号の存在や、元号表記の通知文等全く理解できないというのが現実である。
ただ、天皇の代替わりがある、とのニュースは世界に発信されているので、それと同時に元号が変わる、とのニュース解説をみれば、元号の存在や新元号について、少しは世に知られるかも知れない。
政府としては、1979年に制定された「元号法(注1後記)」に則って、粛々と改元手続きを進めているところである。
この背景には、①昭和からの改元時の報道(注2後記)と違って、他国から批判的意見が出るおそれがない、②今回の改元は崩御ではなく生前退位によるものでタブー視がない、③元号を廃止する動機も必然性もみあたらない、という考えがあるものとみられる。
海外の日本研究専門家も同様の分析を行っている模様で、米コロンビア大のキャロル・クラック教授は、「もう元号は昭和までと同じ存在ではなく、元号と西暦をめぐるイデオロギー対立もみられない。ほとんどの日本人は、便利に暦を使い分けている。もはや、天皇は元号と時代の中でも中心的な位置を占めていない」と解説している。
なお、筆者としては、新元号を契機に、役所等の書類に“西暦併記(括弧書き)”の励行を望みたいところである。
そうなれば、元号に詳しくない一部の日本人はもとより、訪日する多くの外国人の至便性が向上すると思われるからである。
(注1)元号法:元号は政令で定め、皇位の継承があった場合に限り改めることを規定した法律。
(注2)昭和からの改元時の報道:例えば、韓国『東亜日報』の1989年1月9日付紙面では、「ヒロヒトの死により、20世紀の明暗を分けた昭和時代は終わりを告げた」とし、「昭和時代の前半は、戦争と侵略の歴史で綴られており、我が国(韓国)に残した傷跡はまだ深い」と報道されている。
閉じる