米IBMは12日、人間と討論する同社の人工知能(AI)システム「プロジェクト・ディベーター(Project Debater)」が、人間のディベート王者と初めて公開討論会を行い、複雑な話題を議論できることを証明したが、敗北したと発表した。しかし同社は、今回の討論が、人間の言語を習得させる取り組みにおいて、重要な節目になったと評価している。
『AFP通信』『ブルームバーグ』『CNN』などのメディアが報じた討論会は、多くの聴衆が会場やインターネット中継で観戦した。IBMはブログへの投稿で、勝者のハリシュ・ナタラジャン氏(31)は、討論会での勝利数の世界記録を保持する人物と紹介した。
公開討論会は11日、サンフランシスコで行われた。テーマは「就学前教育に対する助成金支給の是非」で、プロジェクト・ディベーターとナタラジャン氏は、テーマと15分の準備時間を同時に与えられた後、約25分にわたり議論を交わした。...
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『AFP通信』『ブルームバーグ』『CNN』などのメディアが報じた討論会は、多くの聴衆が会場やインターネット中継で観戦した。IBMはブログへの投稿で、勝者のハリシュ・ナタラジャン氏(31)は、討論会での勝利数の世界記録を保持する人物と紹介した。
公開討論会は11日、サンフランシスコで行われた。テーマは「就学前教育に対する助成金支給の是非」で、プロジェクト・ディベーターとナタラジャン氏は、テーマと15分の準備時間を同時に与えられた後、約25分にわたり議論を交わした。両者が最初にそれぞれ4分間の基本の主張を行った後、4分ずつ反論を展開した上で、最後に2分ずつ結論としてまとめの主張を行い、聴衆がいずれの立場を受け入れるかを討論の前後に投票する。
プロジェクト・ディベーターは、女性の声を発し、「ミス・ディベーター」との愛称を持つ。ニュースや科学雑誌など約100億の蓄積された文章を吟味しながら、助成金支給に賛成の立場から論じ、社会の最貧困層の人々を支援するための重要な手段であると主張した。一方、ナタラジャン氏は反対の立場から、助成金は貧困の根本的原因に対処するものではなく、中間層の家庭に対する「政治的な動機に基づいたバラマキ」であると応じた。
討論開始時には、助成金の支給に賛成する人は79%、反対する人は13%だったのに対し、討論後には賛成が62%、反対が30%となり、ナタラジャン氏が多くの人を説得して、その意見を変えさせることができたとして、勝者と判定された。
IBMリサーチ(基礎研究所)を統括するダリオ・ギル氏は、今回の討論会実施について、重要なのは勝敗についてではなく、「人間の言語の限りなく複雑で豊かな世界を自由に操れる」AIを創造することだと説明した。
IBMのコンピューター「ワトソン」は、人間のチェスのチャンピオンを破り、テレビのクイズ番組でも人間に勝利したが、今回の討論では、同社のAI開発の新たな課題が明らかになった。ある開発責任者は、人間より優れたものを創るのではなく、人間が必要な情報を選択し、良い決定が下せるよう支援するものを創ることが開発の目的であると述べた。
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