認知症に関する最新の研究によると、認知症を患う人でも、より多くの運動、活動量がある人では、記憶や思考など脳機能がより活性化しているという。これまでは、運動が思考や記憶力低下を遅らせるため、認知症にかかるリスクを軽減するとみられてきたが、今回の研究は、認知症の人でも運動を増やすことで脳機能を維持向上できるというもの。運動とは、毎日のジムやジョギングでなく、日常の生活の中での活動という程度のもので十分とのことである。
1月16日付米国
『NBC』は「認知症でも、運動で脳を活性化できる」との見出しで以下のように報道している。
高齢者でも、良く動く人は認知症にかかっていても、また脳の劣化があっても、運動をしない人より脳がさえているという研究結果が「Neurology」で発表された。この研究は、運動で認知症を予防できるのか、認知症などの脳機能障害がある人がその障害が原因で動きが鈍くなるという仮定に関して疑問解決の糸口となる。...
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1月16日付米国
『NBC』は「認知症でも、運動で脳を活性化できる」との見出しで以下のように報道している。
高齢者でも、良く動く人は認知症にかかっていても、また脳の劣化があっても、運動をしない人より脳がさえているという研究結果が「Neurology」で発表された。この研究は、運動で認知症を予防できるのか、認知症などの脳機能障害がある人がその障害が原因で動きが鈍くなるという仮定に関して疑問解決の糸口となる。この研究により、アルツハイマー病の特徴である動脈硬化等認知症に繋がる病気がある人でも、運動などの活動が記憶力や脳機能を強化することがわかった。
シカゴのルース医大センターのブッチャマン博士は1997年から454人のボランティア被験者を死亡まで調査。その多くは80~90歳代で死亡。手にリストバンドをはめ、日々の運動状態も計測し、定期的に記憶や思考のテストを実施。また死後の脳機能の調査も許可の上行った。これにより、日常的により多く運動した人は、高齢に至るまで、より鮮明な思考や記憶力が高いという結果が得られたという。また、死後の脳では、認知症でない236人と認知症の191人に加齢に関連する障害がみつかった。平均して、3種類の脳の病気がみられ、必ず1つ以上の障害はあったが、運動を良くした人は、死ぬ間際まで思考力が鮮明だったという結果となった。
高齢でジムなど外に行けない人でも、今やっている活動を増やすことで、認知機能を強化することができる。
運動が加齢によるダメージから脳を守るという仮定が、タンパク質や分子構造が存在するのかは、今後の研究に委ねられる。この研究で、運動は脳細胞が死んでいても、記憶を呼び起こし、脳の柔軟性や認知的予備力を高めるとの考えが導き出せるという。
米国のアルツハイマー病患者は500万人以上、高齢化により更に増加すると見られている。認知症治療薬(アリセプトやナメンダ)で短期間は症状が抑えられるが、現状、治療改善の道は厳しい状態である。しかし、運動により脳細胞を保つことができるという研究が増えており、予防や進行を遅らせることは今後可能となるだろう。
同日付英国『ガーディアン』は「運動で認知症の脳も活性化との論文」との見出しで以下のように報道している。
認知症のある高齢者でも、良く動くことは脳の機能を高めるとの論文が発表された。リストバンドで運動や料理などの活動状況を調べた高齢者では、アルツハイマー病や認知症を患っていても、運動による効果が見られたという。
これまでの研究では、運動の効果として、年齢による思考や記憶力低下を遅らせるため、認知症にかかるリスクを軽減するとみられてきたが、最新研究では更に進展。平均91歳で死亡した454人を対象とした、死亡に至るまでの2年間のデータを分析。21項目の認知力テスト、7日間の行動データ、運動能力検査で測定。
認知症でない人の方が平均的に運動が多く、年齢、性別、学歴別の調査では、運動能力も活動量も、思考や記憶に影響なかったため、これらの要素による違いはないといえる。死後の脳の検査では、アルツハイマー症の脳の障害は明らかだったが、同じ病気でも、運動能力の高い、また活動量の多い被験者では、認知力が高いという結果となった。今回の研究では、高齢の時期を対象としており、被験者が若年期にどのような活動をしていたか研究対象とはしていない。活動のタイプ、継続時間の研究があればより有効なデータとなるだろう。
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