香港政府は9日、中国国歌の侮辱を罰する法案を公表した。中国本土で昨年から施行されている国歌法に倣ったものであり、最高で3年の禁錮刑を科す。23日に議会に提出される見通しだが、現在の議会は親中派の議員が多数を占めており、過半数で可決される同法案は、殆ど修正を加えずに成立すると考えられている。
『AFP通信』や香港の地元メディアなどが報じた。中国政府は特別行政区の香港に対し、中国本土の政治方針に従うよう圧力を強めている。同法案が成立すれば、香港から自由が失われていると主張する民主派の活動家らと、香港当局との新たな火種となりそうだ。
中国では以前からパーティーや結婚式、葬儀などでの国歌の演奏が禁じられていたが、昨年10月施行の国歌法により一層の厳格化が行われ、適切な歌い方や場所などが規定されている。...
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『AFP通信』や香港の地元メディアなどが報じた。中国政府は特別行政区の香港に対し、中国本土の政治方針に従うよう圧力を強めている。同法案が成立すれば、香港から自由が失われていると主張する民主派の活動家らと、香港当局との新たな火種となりそうだ。
中国では以前からパーティーや結婚式、葬儀などでの国歌の演奏が禁じられていたが、昨年10月施行の国歌法により一層の厳格化が行われ、適切な歌い方や場所などが規定されている。香港はそれ以降、同法の適用について検討を行ってきた。
公表された法案では、国歌を侮辱する意図で、敬意を欠くような無礼な歌い方をすることを禁じた他、国歌の歌詞や楽譜を変更することを禁止している。国歌に対する重大な侮辱行為に対する罰則として、最大3年の禁錮刑を科すこととしており、これについては本土の国歌法の内容をそのまま採用した。違反者に対しては、禁錮刑とともに最高5万香港ドル(約69万円)の罰金が科される可能性がある。
なお、法案は香港の初等・中等教育課程での国歌に関する教育や、国歌の使用についても規定している。本条項は、助成金が支給されている学校や特殊学校、インターナショナル・スクールなどに適用され、違反に対する罰則は設けられていないという。
香港政府政制・本土事務局の聶徳権(パトリック・ニップ)局長は記者団に対し、法案は「国歌の威厳を保ち、敬意を促進するだろう。」と述べた。香港のサッカーのサポーターらは長年、試合会場で中国国歌にブーイングをし、時には背を向けたり、香港の独立を主張する横断幕を掲げたりすることもあり、中国政府の怒りを買ってきたが、法案はそうした行為などを念頭に置いて策定されている。
法案は、警察の捜査期間を同等の犯罪の6カ月程度から延長し、犯罪発生後2年以内に起訴すれば良いとしたが、サッカーのサポーターなどの群衆の中で犯人を特定する困難さを理由としている。また、裁判官の就任式などの公式行事の場での国歌の演奏頻度まで規定しており、香港の法制度が本土とは別であることなどから、議論を呼ぶ可能性がある。
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