世界銀行は8日、最新の世界経済見通しを発表し、2019年の世界の経済成長率は2.9%と、昨年の3.0%から減速するとの予測を示した。米中貿易摩擦の影響による世界の貿易と生産活動の停滞などを理由に挙げており、摩擦がさらに激化することを警戒している。
『ロイター通信』『AP通信』『BBC』を始め、多くのメディアが速報した。世銀のクリスタリナ・ゲオルギエバ最高経営責任者(CEO)は、世銀が半期毎に発表する世界経済見通しの報告書で、「2018年初めに世界経済はエンジン全開だったが、同年中に勢いを失った。そして今年はさらに苦しい道のりとなる可能性がある。」とコメントしている。
世銀は報告書を「暗くなる空(Darkening Skies)」と題し、2019年の世界経済の成長率見通しを、昨年6月時の3%から2.9%へと引き下げた。世界経済は17年に3.1%、18年は3%成長しており、2年連続の減速となる。先進国の利上げや貿易摩擦、金融市場の動揺などにより、新興国、開発途上国の景気回復も勢いを失ったと分析しており、20年についても2.8%と成長率見通しを引き下げた。
世銀は今年、先進国経済の成長率を2%、新興国は4.2%と予測している。米経済の成長率については、2019年は2.5%と昨年6月時の予想を据え置いたが、昨年の2.9%から減速すると予測した。中国経済も今年は6.2%成長と予想を0.1ポイント引き下げ、昨年の6.5%から減速すると見ている。ユーロ圏の19カ国の成長率については1.6%で、やはり昨年の1.9%から低下すると予測した。
減速が基調の中、日本の経済成長率については、日銀の超緩和政策の継続や、2018年に相次いだ自然災害などの影響が収まることを前提に、2019年は0.9%、20年は0.7%と、それぞれの昨年6月時の予想0.8%、0.5%から引き上げた。21年は0.6%成長としている。
貿易摩擦による関税の賦課の応酬は、世界貿易の足かせとなっている。世銀は、世界貿易の今年の伸び率を3.6%、20年は3.5%と、昨年6月時の予想からそれぞれ0.6、0.5ポイント下方修正し、2017年の5.4%、18年の3.8%からさらに減速すると予測した。貿易の停滞は、世界中の生産活動を阻害することになる。
また、金利の上昇やドル高も、多額の債務を抱える新興国の政府や企業を直撃することになり、世界経済の減速要因となる。世銀は特にトルコ、アルゼンチン、イラン、パキスタンなどの2019年の成長率予測を引き下げた。
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