キューバの首都ハバナの米国大使館に勤務する多くの米外交官やその家族が、2016年秋ごろから翌年にかけて、謎の騒音を聞いて頭痛やめまい、聴覚障害、脳損傷などの症状を訴えていた問題をめぐり、英米の研究者らは4日、大使館関係者が聞いた音声は、コオロギの鳴き声であった可能性があると指摘した。
『CNN』や
『ニューヨークタイムズ』、英
『ガーディアン』などが8日までに報じた。同様の問題は、同地のカナダ大使館の外交官らにも広がり、本問題について米国務省は、被害者らは何らかの装置による「音響攻撃」を受けたのではないかとの疑いを持っている。
米外交官らはこの騒音を「ブンブン鳴る音」「金属を研磨する音」「かん高いキーキーいう音」などと表現しており、2017年10月にAP通信が、同事件に関するものとされる音声を入手し、初めて公開した。しかし米当局は、これまでのところ被害者の症状の原因について、明確に特定できておらず、キューバ当局はいかなる攻撃も否定している。
米国務省の報道官は、米外交官とその家族、海外に滞在する米国民の安全は同省の最優先事項であるとして、在キューバ大使館の問題については、政府の複数省庁が専門家の支援を得て、引き続き原因を究明中であると述べた。
英リンカーン大学と米カリフォルニア大学バークレー校の2人の科学者は4日、音声を分析した結果、コオロギの鳴き声である可能性があるとの研究結果を発表した。AP通信の音声とカリブ海地域に生息するコオロギの一種の録音した鳴き声を比較し、持続時間、パルス繰り返しの間隔、パワースペクトル、パルス繰り返し数の安定性、パルス当たりの振動数などの音の諸要素が、微妙な違いはあるが、ほぼ一致することを発見したという。
両者にわずかな違いがあったことについて科学者らは、AP通信が公表した音声は屋内で録音されたものであるのに対し、昆虫の鳴き声は、通常野外で録音されるからではないかと推測している。実際、録音されたコオロギの鳴き声を屋内で鳴らしたところ、2つの音声の質はさらに近くなった。但し、本研究結果は他の専門家の検証を受けてはいない。
今回科学者らは、AP通信の音声がカリブ海のコオロギのものである可能性を指摘しただけであり、健康上の問題が生じた原因についてまでは明確にしていない。2人は、健康問題はこの研究の対象外であるとして、大使館の職員らが別の形態の攻撃の被害者となった可能性や、症状が心因性のものであった可能性などを排除しなかった。
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