カナダ政府が、米当局の依頼で中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の副会長兼最高財務責任者を逮捕したことから、中国政府はこの報復とばかり、中国滞在中のカナダ人をスパイ容疑で次々と逮捕している。そして今度は、ロシア政府による元海兵隊員の米国人逮捕の翌日、米政府がロシア人旅行者を逮捕・拘留したことから、米・ロ間でもスパイ容疑による逮捕合戦が始まった。
1月5日付米
『ロイター通信』:「ロシア政府、元米海兵隊員を逮捕してすぐに、報復措置として米政府がロシア人旅行者を逮捕したと非難」
ロシア外務省は1月5日、ロシア当局が元米海兵隊員を逮捕してすぐ、今度は米政府がロシア人旅行者を不当に逮捕したとして非難した。
同省によると、米連邦捜査局(FBI)が12月29日、家族と共にサイパン島に旅行に赴いたドミートリィ・マカレンコ氏を、同氏一行が同島の空港に着いた途端に逮捕したという。...
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1月5日付米
『ロイター通信』:「ロシア政府、元米海兵隊員を逮捕してすぐに、報復措置として米政府がロシア人旅行者を逮捕したと非難」
ロシア外務省は1月5日、ロシア当局が元米海兵隊員を逮捕してすぐ、今度は米政府がロシア人旅行者を不当に逮捕したとして非難した。
同省によると、米連邦捜査局(FBI)が12月29日、家族と共にサイパン島に旅行に赴いたドミートリィ・マカレンコ氏を、同氏一行が同島の空港に着いた途端に逮捕したという。
同氏はそのままフロリダ州に移送された模様だが、同省は同氏と全く連絡がつかないとしている。
一方、ロシア連邦保安局(FSB)は12月28日、元米海兵隊員のポール・ウィラン氏を逮捕しているが、同氏の家族は、モスクワでの結婚式に出席するために訪問しただけで、全く無実だと訴えている。
米国務省のマイク・ポンペオ長官は今週初め、ロシア政府に対して、ウィラン氏の逮捕理由を説明するよう求め、もし逮捕が間違いであったなら即日釈放するよう要求している。
また、ウィラン氏が英国籍も保有していることから、英国政府も1月4日、個人を国家間の外交交渉用のカードに使うべきではないと非難した。
なお、米当局によるロシア人旅行者の逮捕のニュースが伝わる前、専門家は、ロシア政府が既に米当局によって逮捕・拘留されているロシア人(注後記)と交換するため、ウィラン氏を逮捕したものと分析した。
しかし、新たな展開を迎えたことから、ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は『インテルファックス通信』のインタビューに答えて、この期に及んで、双方が逮捕・拘留している容疑者の交換など考えられず、ただ通常の手続きで問題解決に当るだけだと述べている。
ドナルド・トランプ大統領とウラジーミル・プーチン大統領は、それぞれ個人的な信頼関係を構築していきたいと考えているようだが、核兵器軍縮問題、シリア内戦、更には対イラン政策等で対立が深まってきており、今回の双方による相手国市民の逮捕合戦によって、益々緊張が高まるものとみられる。
同日付ロシア『タス通信』:「ロシア政府高官、米政府に対して逮捕・拘留されたロシア人旅行者へのコンタクトを要求」
ロシア外務省のリャブコフ次官は1月5日、『タス通信』のインタビューに答えて、ロシア政府は米政府に対して、サイパン島でFBIに逮捕されたマカレンコ氏にロシア領事館員がコンタクトできるよう求めていると述べた。
同次官は、またしても米側の不手際で、依然マカレンコ氏とコンタクトができていないとした上で、当然のことながら米政府に対して、ロシア市民であるマカレンコ氏の権利侵害を犯さないようにも求めている言及した。
マカレンコ氏は、ロシア向けに武器輸出を試みたとの容疑で逮捕されたという。
なお、同次官は全ロシア国民に対して、海外に渡航する場合は、米国内はもとより他国においても安全は確保されないということを改めて注意喚起している。
同次官によると、カナダの例(米国政府意向で中国人がカナダで逮捕)にあるとおり、米国外であっても、不当に逮捕されて米国に移送されてしまう恐れがあるからだ、と強調した。
(注)米国内で逮捕・拘留中のロシア人:昨年7月、スパイ活動の罪でロシア人女性マリア・ブティナ被告が刑事訴追されている。ロシア政府は「でっち上げの訴追」と反発したが、ブティナ被告は12月に罪を認め、米検察との司法取引に応じている。
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