習近平(シー・チンピン)国家主席は今月下旬、就任以来初となるフィリピン訪問の予定である。11月中旬にパプアニューギニアで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)出席の帰途、立ち寄る意向である。フィリピンとしては、2016年にロドリゴ・ドゥテルテ大統領が訪中した際に、その従順さが評価されて中国側より240億ドル(約2兆6,880億円)の政府開発援助(ODA)などを獲得していることから、今回の国家主席初訪比を契機に、懸案の国内インフラ開発事業追加支援のみならず、南シナ海における天然資源共同開発についても合意に持ち込みたいと熱望している。中国側としても、欧米から非難されている南シナ海領有権問題について、フィリピン懐柔策を完成させ、その勢いで一挙に他の東南アジア諸国も服従させる足掛かりとなると期待しているとみられる。
11月9日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「中国国家主席が訪比してインフラ開発事業につき協議予定」
習近平国家主席は今月下旬、フィリピンを初訪問する予定であるが、その際、同国への更なるインフラ開発事業支援や、南シナ海に賦存する天然資源の共同開発について協議されるものとみられる。
中比関係は、2016年に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領が親中路線を標榜して以来、目覚ましい進展をみている。...
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11月9日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「中国国家主席が訪比してインフラ開発事業につき協議予定」
習近平国家主席は今月下旬、フィリピンを初訪問する予定であるが、その際、同国への更なるインフラ開発事業支援や、南シナ海に賦存する天然資源の共同開発について協議されるものとみられる。
中比関係は、2016年に就任したロドリゴ・ドゥテルテ大統領が親中路線を標榜して以来、目覚ましい進展をみている。
同大統領の初訪中時には、中国側は240億ドルものODA等の支援を約している。
そこで、フィリピン政府としては、今回の習国家主席訪問を契機に、首都マニラと同国東部のビコル半島を結ぶ鉄道建設プロジェクト用の資金33億ドル(約3,700億円)の融資を獲得したいと考えている。
同プロジェクトは、ドゥテルテ大統領が発表した2017~2022年“造れ、造れ、造れ”5ヵ年計画(総資金1,690億ドル、約18兆9,300億円)の目玉の一つである。
更に同政府は、貧困地域ながら資源が豊富な同国南部ミンダナオ島における6億600万ドル(約680億円)の鉄道建設資金の融資も期待している。
ただ、フィリピンの一部の専門家は、多額の中国資金援助を受けた結果、パキスタンやスリランカのように債務超過に陥るのではないかと懸念している。
一方、両首脳は、南シナ海の領有権問題について直接的なやり取りはしないとみられるが、フィリピン側が切望する、同国パラワン島近海(南シナ海南端)の天然資源開発について中国と共同で当るとの案について、中国側から前向きな回答を得たいと考えている模様である。
なお、中国側としても、フィリピンとの共同開発がうまく運べば、南シナ海で領有権争いをしているベトナム、ブルネイ、マレーシア、インドネシア等に対して、(力で押すのではない)友好的な中国というイメージを抱かせやすいと考えているとみられる。
一方、同日付フィリピン『マニラ・ブルティン』紙:「南シナ海問題がASEANサミットの主要議題に」
フィリピン外務省のジュネバー・マヒラム=ウェスト次官補は11月9日の記者会見で、来週シンガポールで開催される第33回東南アジア諸国連合(ASEAN)サミットにおいて、朝鮮半島の問題に加えて、南シナ海領有権問題が主要議題になるとコメントした。
なお、前回出席したドナルド・トランプ大統領は今回欠席し、代わってマイク・ペンス副大統領が出席するという。
また、前回ドミートリィ・メドベージェフ首相が出席したロシアは、今回ウラジーミル・プーチン大統領が出席するという。
ともかく、ドゥテルテ大統領にとって、トランプ大統領は友人であり、プーチン大統領は憧れの人と発言していることでもあり、また、今月下旬に訪比予定の習国家主席も同サミットに参加するため、同大統領のトップ外交が展開することになろう。
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