インドのモディ首相は23日、同国の最貧層の5億人を対象に、保険料が無料の世界最大の健康保険制度「モディケア」を立ち上げた。インドでは来年総選挙が予定されており、2期目を目指す首相にとって、本制度の始動は最重要政策の1つである。
本制度は今年初めに連邦予算の中で発表されたが、インドの人口12億5,000万人の40%に当たる最貧層を対象としている。最低所得の1億世帯が、重病の治療を受ける場合に、健保から50万ルピー(約78万円)の医療費を支給されるが、同国ではかなりの高額となる。制度運用のために、中央政府と29の州政府が、毎年合計約16億ドル(約1,800億円)を負担することが見込まれており、予算は需要に応じ段階的に増額されていく。...
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本制度は今年初めに連邦予算の中で発表されたが、インドの人口12億5,000万人の40%に当たる最貧層を対象としている。最低所得の1億世帯が、重病の治療を受ける場合に、健保から50万ルピー(約78万円)の医療費を支給されるが、同国ではかなりの高額となる。制度運用のために、中央政府と29の州政府が、毎年合計約16億ドル(約1,800億円)を負担することが見込まれており、予算は需要に応じ段階的に増額されていく。
モディ首相は、東部のジャールカンド州の州都ラーンチーで行われた制度発足の式典で保険証を手渡し、インドにとって歴史的な日になったと強調した。首相はツイッターに、貧困層の人々に心を寄せ、その健康のために力を尽くしていきたい旨の投稿を行った。
インドは公的医療制度に国内総生産(GDP)の1%しか投じておらず、その割合は世界でも最低水準だ。制度には過度の負担がかかっており、施設と医師の不足が慢性化している。殆どの人は経済的に可能であれば、民間の診療所や病院を利用しているが、診察料は1,000ルピー(約1,550円)かかることもあり、毎日の生活費が2ドル(約255円)未満の数百万人の人々にとって、これは大金である。
インド政府は、平均的な世帯の支出額の60%超が、医薬品代や治療費などに使われていると見積もっている。また最貧層の多くは、医療サービスを一切利用していないという。英医学誌ランセットに今月公表された報告書によると、インドでは低水準の医療による死亡者数が毎年160万人に上ると推定されており、世界で最多となっている。
モディ首相は、貧困層支援策を基盤に、来年5月の総選挙で勝利して2期目の当選を目指しており、「モディケア」はその主要政策である。野党などの批判勢力は、そうした巨大なセイフティーネットに投入する財源の確保について疑問を投げかけており、総選挙に向けた急場の人気取りに過ぎないと指摘する声も上がっている。
野党・国民会議派のサンジャイ・ニルパム議員は、「これは新たな詐欺だ。国民は後に選挙の宣伝だけの政策に過ぎないと気づくだろう。」と厳しく批判した。
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