既報どおり、インド洋の島嶼国であるモルディブの大統領選挙の結果、当初の予想に反して、親中派のアブドゥラ・ヤミーン現職大統領(59歳)が、親インド派の野党候補イブラヒム・モハメド・ソリ氏(54歳)に敗れた。現職大統領はこれまで、主な政敵のほぼ全員を投獄するか亡命に追い込んできており、また、今回の大統領選に当って、国際監視団の入国を拒否する等、強権を発動していたため、選挙結果に従わず、国内動乱に発展する恐れがあった。しかし、開票日翌日にすんなり敗北を認めたことから、その懸念はひとまず薄れた。一方、親インド派候補が当選したとは言え、インドによる経済支援は中国のそれにとても及ばず、従って、中国指導部が推す“一帯一路経済圏構想(OBOR)”の下でのモルディブ向け経済攻勢が弱まることはないとみられる。
9月24日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「モルディブの現職大統領が選挙戦の敗北を認めたため同国混乱のリスク軽減」
9月23日に実施されたモルディブ大統領選挙において、野党候補のイブラヒム・モハメド・ソリ氏(モルディブ民主党々首)が現職大統領のアブドゥラ・ヤミーン氏(モルディブ進歩党々首、2013年11月就任の第6代大統領)を破った。
同国最高裁判所はかつて、2013年の前回大統領選を無効と判断したこともあったが、再投票の結果当選したヤミーン大統領は、即座に反体制派の弾圧に乗り出し、政敵のほとんどを収監していた。...
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9月24日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「モルディブの現職大統領が選挙戦の敗北を認めたため同国混乱のリスク軽減」
9月23日に実施されたモルディブ大統領選挙において、野党候補のイブラヒム・モハメド・ソリ氏(モルディブ民主党々首)が現職大統領のアブドゥラ・ヤミーン氏(モルディブ進歩党々首、2013年11月就任の第6代大統領)を破った。
同国最高裁判所はかつて、2013年の前回大統領選を無効と判断したこともあったが、再投票の結果当選したヤミーン大統領は、即座に反体制派の弾圧に乗り出し、政敵のほとんどを収監していた。
そこで、今回の選挙結果に対してヤミーン氏の対応に注目が集まっていたが、9月24日午後の記者会見で、あっさりと敗北を認める旨表明した。
また、同氏は更に、国民が選んだソリ氏に対して、当選を祝うコメントを伝えたと言及した。
これまでヤミーン大統領は、親中路線を辿り、中国側から20億ドル(約2,200億円)に及ぶインフラ投資を呼び込んできた。
これに対して、かねてモルディブへの影響力を保持してきたインドや西側諸国は、過度な中国資金の流入でモルディブが借金まみれとなり、やがて中国の属国化となることを危うんできていた。
当選したソリ氏は、中国投資事業について見直すとしているが、中国が簡単に引き下がるとはみられない。何故なら、中国が推進するOBOR政策に伴い、南アジアに投下される資金拠出額はすさまじく、とてもインドや米国が代替できるものではないからである。
中国側も、モルディブ向けの事業投資は継続することになると表明している。また、専門家の中には、同国への中国側の軍事的影響力行使も続けられるものとみる向きもいる。
なお、ソリ氏は、現職大統領が強権発動した以下の事態につき、すぐさま修正、あるいは解明するとしている。
*名誉棄損防止法:反体制派取り締りのために制定した法律で、これによって多くの野党政治家らが投獄、あるいは亡命させられた。
*アーメド・リルワン・アブドゥラ記者:『モルディブ・インディペンデント』紙の敏腕記者でヤミーン政権批判の急先鋒。2014年8月に自宅で拉致されて以降、行方不明。ヤミーン大統領の側近の命令で行われた犯罪との疑い。
同日付フランス『AFP通信』:「モルディブの強権現職大統領が敗北を認め、ひとまず安堵」
中国とインド両方からの圧力の中、モルディブの大統領選において、親インド派候補が勝利した。
これまで、親中派で強権大統領と恐れられたヤミーン氏が、選挙結果に従わず、軍隊を動かす等、反対行動に出る恐れがあった。
しかし、ヤミーン氏が9月24日になって、潔く敗北を認めることとなり、多くの国民は暴動等のリスクが軽減されたと安堵している。
背景のひとつには、ヤミーン大統領が2013年に強権を発動して、異母兄のマウムーン・アブドル・ガユーム元大統領(80歳、1978~2008年の第2代大統領)を投獄したが、ガユーム元大統領に心酔する将校が多く軍隊にいたことから、ヤミーン大統領の命令に従わないと見られた可能性が高い。
ヤミーン大統領は記者会見で、今年11月の任期到来の際、新任大統領にスムーズに政権を引き継ぐと表明している。
なお、同氏のコメントに先立ち、米国務省はヤミーン氏に対して、選挙結果を尊重するよう求め、また、インドは、“民主主義の勝利”と歓迎していた。
一方、中国は9月24日が祝日(2008年から国定休日となった中秋節)であるため、まだ公式見解はなされていない。
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