9月8日、ニューヨークで開催されていた、女子プロテニス・全米オープンで、大坂なおみ選手が見事優勝した。
この大ニュースに、日本人の多くが、“日本人初の4大大会優勝”として歓喜した。
安倍晋三首相も早速、「西日本の台風21号による災禍、及び北海道の大地震に見舞われたばかりの日本国民に、元気と感動を与えてくれた」と称賛している。
ただ、大坂選手は、“テニス・プレーヤーとして日本国籍”を選択しているが、現在は日米の二重国籍保有者である。...
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9月8日、ニューヨークで開催されていた、女子プロテニス・全米オープンで、大坂なおみ選手が見事優勝した。
この大ニュースに、日本人の多くが、“日本人初の4大大会優勝”として歓喜した。
安倍晋三首相も早速、「西日本の台風21号による災禍、及び北海道の大地震に見舞われたばかりの日本国民に、元気と感動を与えてくれた」と称賛している。
ただ、大坂選手は、“テニス・プレーヤーとして日本国籍”を選択しているが、現在は日米の二重国籍保有者である。
カリブ海の国ハイチ出身の父と日本人の母の次女として生まれた大坂選手は、3歳のときに米国に移住したため、英語が母国語となっていて、日本語は片言である。
それもあってか、数年前までは、大坂選手がテニスの試合で活躍しても、「片言の日本語しか話せず、また、見た目も少々異なる彼女は日本人?」との心無い声があったことは事実である。
しかし、冒頭で述べたとおり、多くの日本人や時の首相までも、“日本人の偉業”として大絶賛している以上、ある意味で大坂選手は、“本当の日本人”と認められたのではあるまいか。
9月9日付の米『ニューヨーク・タイムズ』紙も、「大坂なおみ選手の全米オープン優勝で、日本人として再認識」と題した記事の中で、ともすればこれまで、“ハーフ(外国人との混血児)”を純粋な日本人として認めてこなかった日本社会に、大きな一石を投じることになった、と報じている。
すなわち、同紙は過去の事例として、2015年のミス・ユニバース日本代表として、黒人の父と日本人の母との間に生まれた宮本アリアナさん(当時22歳)が初めて選出された際に、一部の日本人から露骨に、「見た目が全く日本人ではない人が選出されるのは不適切」との誹謗中傷を受けたことを記している。
同記事の中で専門家は、日本人は単一民族であることを誇りに思っており、様々な分野での“日本代表”は純粋な日本人(両親とも日本人)である必要があると考えてきたと解説している。
しかし、“ハーフ”である宮本アリアナさんが、初めて2015年のミス・ユニバース日本代表に選ばれたことで、徐々に日本人の価値観が変化してきているとみられる。
実際、2016年9月8日付の英『BBCニュース』も、「インド人との混血である吉川プリアンカさんがミス日本代表に」と題した報道の中で、2015年に続き、2016年ミス・ワールド日本代表に、“ハーフ”の吉川プリアンカさん(当時22歳)が選出されたとし、日本社会における日本人感が変わりつつあると記している。
同ニュースは、日本における“ハーフ”の誕生は、毎年生まれる赤ん坊の僅か3%であり、過去において、一般的な純粋な日本人と比べて特別視される傾向にあった、とも報じている。
そして、同ニュースは、2年連続でミス日本に“ハーフ”の女性が選出される等、明らかに以前とは違った価値観が出てきているとも言及した。
ただ、同ニュースは、国籍法で“父母両系血統主義”(注;1984年までは父系血統主義)を採用している日本において、“日本代表=純粋な日本人”と考える人が多くいたことは否めないとした。
しかし一方で、“出生地主義”の米国において、2014年ミス・アメリカ代表にインド系のニーナ・ダブルイさん(当時25歳)が選出された際、一部の米国人が、見た目からだけで判断して、彼女を“アラブ人”だとか“アラブのテロリスト”と誹謗中傷していたことを挙げて、問題提起している。
なお、これまで述べてきたことから少々ずれるが、全米オープン勝利後に日本に凱旋(?)した大坂選手に対して、日本メディアのインタビューアーらが、「試合後に食べた日本食は何か?」とか、「初めて覚えた日本語は何か?」等、全米オープンやテニスに全く関係ない質問を繰り返していたことは残念である。
当該インタビューアーの勉強不足も問題だが、もし一部の日本メディアの根底に、“日本代表=純粋な日本人”という固定観念が依然強く根付いていることが原因だとしたら、甚だ不安に感じざるを得ない。
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