ドナルド・トランプ大統領は昨年4月、シリア政府軍が西部イドリブ県で化学兵器サリンを使用したとして、シリア空軍基地への巡航ミサイル59基による攻撃を実施した。しかし、バッシャール・アル=アサド政権の対応は依然変わらず、今年4月初め、首都ダマスカス郊外の東グータ県(ドゥーマ)で再び化学兵器による攻撃を行った。そこでトランプ大統領は、シリア政府の背後にいるロシア・イランを敵視し、改めて米・英・仏軍による空爆(前年の倍のミサイル100基余り)をダマスカス近郊及び西部ホムスの化学兵器工場・貯蔵施設に対して行った。これに怒ったアサド大統領は遂に、反政府勢力の抵抗が最も激しいイドリブ県において、化学兵器を使用することを公に認めた。
9月10日付米
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「シリアのアサド大統領、国際社会の非難に耳を貸さず、イドリブ県の反政府勢力への化学兵器による攻撃を許可」
『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は9月9日、シリアのバッシャール・アル=アサド大統領が、反政府勢力が最後まで抵抗を続けているイドリブ県への攻撃に、化学兵器の塩素ガスを使用することを許可した旨報じた。
それに先立つ1週間程前に、ドナルド・トランプ大統領が、シリア政府軍及び背後の同盟国がイドリブ県への化学兵器による“無謀な攻撃”は許さないとし、それは“重大な人為的ミス”だと非難していた。...
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9月10日付米
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「シリアのアサド大統領、国際社会の非難に耳を貸さず、イドリブ県の反政府勢力への化学兵器による攻撃を許可」
『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は9月9日、シリアのバッシャール・アル=アサド大統領が、反政府勢力が最後まで抵抗を続けているイドリブ県への攻撃に、化学兵器の塩素ガスを使用することを許可した旨報じた。
それに先立つ1週間程前に、ドナルド・トランプ大統領が、シリア政府軍及び背後の同盟国がイドリブ県への化学兵器による“無謀な攻撃”は許さないとし、それは“重大な人為的ミス”だと非難していた。
国連高官の予測では、もしイドリブ県への攻撃が実施されたら、おそらく80万人の難民が新たに発生するとする。
また、米・仏両国も、化学兵器による攻撃は人道的な危機をもたらすとして、もし実施されれば西側諸国からの報復措置が取られるとも表明した。
しかし、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙報道では、国際社会からの圧力をかけても、ロシアとイランの支援もあって、アサド政権はほとんど動揺することになっていないとしている。
ロシア及びイランとしては、最後の抵抗勢力である反政府軍をイドリブ県で殲滅させれば、シリア政府軍が全土を制圧することになり、よって(2011年から)長く続いたシリア内戦を終結させることができると考えている。
一方、ロシア・イラン・シリア・トルコの4ヵ国首脳会議を提唱したレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、停戦を要求し、イドリブ県での“大虐殺”を避けるよう進言したが聞き入れられなかった。
すなわち、ウラジーミル・プーチン大統領は、“シリア内に潜伏するテロリストの殲滅”のためだと言えば、ハッサン・ロウハニ大統領も、“イドリブ県からテロリストを一掃”する作戦だと、アサド政権を擁護する発言をした。
なお、シリア民間防衛隊(ホワイト・ヘルメット、注後記)によると、シリア政府軍による攻撃が9月9日、イドリブ県のホベイトにて実施され、幼い少女1人が犠牲になり、民間人数人が怪我を負ったという。
一方、9月11日付ロシア『タス通信』:「ロシア紛争和解センターがシリアのデリゾール県で食料・衣服を供給」
ロシア紛争和解センター長のウラジーミル・サフチェンコ氏は9月11日、シリア北東部のデリゾール県内で食料品を詰めた570袋(合計2.1トン)、ハチミツ瓶100本、そして子供用衣服600着をシリア市民に供給したと発表した。
同センターは、デリゾール県のラタキアとハツラをベースとして市民支援運動を展開していると付言した。
同センターによると、イドリブ県の緩衝地帯において、不法武装組織による停戦違反の攻撃が激しくなっており、政府組織側からの反撃が行われているという。
(注)ホワイト・ヘルメット:シリアの反体制派支配地域とトルコで活動するボランティア組織。シリアでの活動の大半は、爆撃に応じた都市型捜索救助、医療救助、危険地帯からの民間人の避難、必要不可欠のサービス提供で構成されている。2014年の組織の創設以降、159人のホワイト・ヘルメットが殺害されている。
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