【Globali】
英EU離脱投票後の企業活動の停滞で1世帯あたり900ポンドの収入減、中央銀行総裁(2018/05/23)
英中央銀行イングランド銀行のマーク・カーニー総裁は、22日に行われた下院の財務特別委員会で、欧州連合(EU)離脱(Brexit)の国民投票以降、同国の世帯収入は実質約900ポンド(約13万3,000円)減少していると述べ、Brexitの先行きが不透明なことにより、企業による投資などの経済活動が停滞している影響について説明した。
カーニー総裁によれば、世界経済の力強さにも関わらず、英国の経済成長率は、国民投票の結果がEU残留を選択したとのシナリオの下に、同中央銀行が2年前に作成したモデル対比で最大2%下回っているという。「家計の実質収入は、我々が2016年に予測したより、約900ポンド下回っている。これは大きな額だ。問題はなぜ、そして何がその違いを生んだかだが、その一部はEU離脱によるものだ。」とカーニー氏は述べた。
テリーザ・メイ政権は、Brexit後の関税の徴収方法をめぐる対立により混乱している。...
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カーニー総裁によれば、世界経済の力強さにも関わらず、英国の経済成長率は、国民投票の結果がEU残留を選択したとのシナリオの下に、同中央銀行が2年前に作成したモデル対比で最大2%下回っているという。「家計の実質収入は、我々が2016年に予測したより、約900ポンド下回っている。これは大きな額だ。問題はなぜ、そして何がその違いを生んだかだが、その一部はEU離脱によるものだ。」とカーニー氏は述べた。
テリーザ・メイ政権は、Brexit後の関税の徴収方法をめぐる対立により混乱している。メイ首相が主張する案は、EU向けの物品については、英国がEUに代わり関税を徴収し、英国向けの物品には英国の関税を適用するというものだが、強硬な離脱派は、さらにIT技術を駆使し、税関検査自体を削減する案を推している。
カーニー氏は、企業による投資は依然として低調だが、Brexit交渉が最終的に合意に達すれば、急激に上向く可能性もあるとの考えを示した。但し、関税に関する論争が収まらなければあり得ない見通しであるとも警告している。「企業が投資を控えている理由は理解できる。まもなく大きな決定がなされるため、その方向性が明らかになるまで待ちたいに決まっている。」と議員らに語った。
Brexitを推進する英政府は、以前からカーニー氏の発言に対し、否定的な反応を示してきたが、今回も同様だった。英首相官邸の報道官は「経済は驚くほどの弾力性を維持しており、この5年間成長し続けている。」と述べた。ボリス・ジョンソン外相は、滞在中のアルゼンチンで記者会見し、「経済成長は国民投票の後、多くの人が予想したより力強い。」「Brexitがこの国の利益を損ねていることは絶対にない。」と断言している。
しかしながら、国民投票後、英国民はポンド下落による輸入食料品や燃料などの値上がりによるインフレに苦しんできた。失業率は1970年代半ば以来の低率となったものの、賃金の伸びは抑えられ、生活水準は下がる一方だったが、この2月から家計収入が上昇に転じ、やや明るい兆しが見えている。
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