フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領はこれまで、敵対する相手に対しては、それが海外の首脳や国際的組織の代表であろうと、悪態をついたり脅したりと、米国のドナルド・トランプ大統領に劣らず傍若無人振りを発揮してきた。そして今度は、自身に批判的な国務長官や大統領補佐官を更迭したトランプ大統領に負けじと、自身の麻薬撲滅政策に批判的だった最高裁長官を失職に追い込んだ。なお、同長官はこの決定に対して不服申し立てを行うとしている。
5月11日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「フィリピンのトップ判事、ドゥテルテ大統領に戦いを挑むも今や失職」
フィリピンの最高裁は5月11日、これまでロドリゴ・ドゥテルテ大統領の麻薬撲滅政策などに批判的だったマリア・ローデス・セレノ最高裁長官(57歳)を追放する決定を下した。
ドゥテルテ政権の顧問弁護士が、同長官が2012年の就任時に彼女の財産を公開しなかったことを理由として、同長官を罷免するよう提訴したことに対して、最高裁の判事が8対6でこれを支持する判断を下したもの。...
全部読む
5月11日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「フィリピンのトップ判事、ドゥテルテ大統領に戦いを挑むも今や失職」
フィリピンの最高裁は5月11日、これまでロドリゴ・ドゥテルテ大統領の麻薬撲滅政策などに批判的だったマリア・ローデス・セレノ最高裁長官(57歳)を追放する決定を下した。
ドゥテルテ政権の顧問弁護士が、同長官が2012年の就任時に彼女の財産を公開しなかったことを理由として、同長官を罷免するよう提訴したことに対して、最高裁の判事が8対6でこれを支持する判断を下したもの。
セレノ長官はこれまで、ドゥテルテ大統領の麻薬撲滅政策下での超法規的殺人や、フィリピン南部に出した戒厳令に対して批判を繰り返していた。
これに対して同大統領は先月、同長官は自身の“敵”と非難し、議会に対して同長官を罷免するよう求めると発言していた。
セレノ長官の支持者のひとりは、最高裁の決定は、フィリピン憲法を“破滅”させ、“最高裁自身を堕落”させるものだと非難した。
また、反ドゥテルテ派の代表たちも異口同音に、ドゥテルテ政権が司法までも操ることになり、民主主義の崩壊に繋がると非難した。
なお、大統領府のハリー・ローク報道官は、5月11日の最高裁判断が最終であり、議会に諮る必要はないとコメントしている。
5月12日付フランス『フランス24』オンラインニュース(『AFP通信』配信):「追放されたフィリピン最高裁長官、不服申し立ての意向」
セレノ長官のカルロ・クルーズ報道官は、5月11日の最高裁判断を不服として、再審議の申し立て(MR)を行う予定だと表明した。
同長官の罷免に反対した判事を含め、法律専門家らは、憲法の下では判事の罷免は議会でのみ認められると主張している。
ただ、これまでドゥテルテ大統領を非難してきた人たちはほとんど追放されたり、有罪判決を受けたりしている。例えば、同大統領の人権問題を批判した人権委員会委員であり、かつ、同大統領の腐敗問題の追及を求めていたライラ・デ・リマ上院議員は、投獄されてしまっている。
同日付フィリピン『サン・スター』紙:「パネロ主任弁護士、セレノ長官罷免にドゥテルテ大統領は関与していないと明言」
大統領の顧問弁護団のサルバドール・パネロ主任弁護士は5月12日、最高裁判事によるセレノ長官の罷免決議にドゥテルテ大統領は関与していないと明言した。
同弁護士はまた、同大統領はこれまでも一切、関係省庁や閣僚の罷免等に干渉していいないとも表明した。
更に同弁護士は、セレノ長官はMRを申し立てる権利があるとした上で、今回8対6の僅差で罷免を決定した判事の中のひとりでも翻意したら、事態は変わる可能性があるともコメントした。
閉じる