欧州連合(EU)の欧州委員会は21日、米フェイスブックやグーグルなどの巨大IT企業の売上高に課税する「デジタル税」の導入を加盟国に対し提案した。国際的な法人課税ルールの検討も行われているが、暫定措置として独自案の検討を進めることとした。
従来の国際的な法人課税ルールでは、国内に支店や工場など恒久的な施設のない企業に対しては課税しないのが原則であり、グローバルな巨大IT企業は、欧州で巨額の利益を挙げながら殆どの国で拠点を持たず、税金の安いアイルランドやルクセンブルクに利益を移転するなどして、多くのEU加盟国で税逃れをしているとの不満が高まっている。
インターネットを介した取引による収益への課税方法については、国際的な課題となっており、経済協力開発機構(OECD)などで見直しを検討しているが、合意形成には時間がかかるため、EUでは独自の課税策を先行させることにした。...
全部読む
従来の国際的な法人課税ルールでは、国内に支店や工場など恒久的な施設のない企業に対しては課税しないのが原則であり、グローバルな巨大IT企業は、欧州で巨額の利益を挙げながら殆どの国で拠点を持たず、税金の安いアイルランドやルクセンブルクに利益を移転するなどして、多くのEU加盟国で税逃れをしているとの不満が高まっている。
インターネットを介した取引による収益への課税方法については、国際的な課題となっており、経済協力開発機構(OECD)などで見直しを検討しているが、合意形成には時間がかかるため、EUでは独自の課税策を先行させることにした。
21日に発表された欧州委員会の提案では、世界の売上高が7億5,000万ユーロ(約980億円)超、EU域内で5,000万ユーロ(約65億円)超の国際企業を対象に、オンライン広告やデータに関わる取引などのデジタル関連の事業から得られる売上高に3%を課税する。加盟国全体で年間50億ユーロ(約6,500億円)の税収増を見込むとしている。
それに加え中長期的な対策として、各加盟国は、国内に企業の支店や工場などの実体がなくても、提供しているサービスが利用されていれば、売上高が年間700万ユーロ(約9億1,400万円)超、利用者が年間10万人超などの一定条件に合致する場合、国内にデジタル拠点があるとみなし、課税できるようにした。
欧州の一般企業は平均24%の税率で法人税を納付しているのに対し、グローバルIT企業が欧州で支払う税金の実効税率は10%未満にとどまる。欧州委員会のヴァルディス・ドムブロフスキス副委員長は声明で、「現在課税されていない金額は受け入れ難いほどであり、早急に課税ルールを21世紀にふさわしいものに変える必要がある。」と指摘した。
しかしながら、デジタル課税の実現には加盟28カ国の全会一致が必要で、低税率で企業を誘致した国は抵抗姿勢を示しており、予断を許さない。また事実上の標的の巨大IT企業は、米政府を巻き込んで断固として反対しており、先に米国が打ち出した鉄鋼・アルミの輸入制限を巡る貿易戦争の懸念と相まって、米欧の対立が激化することも予想される。
閉じる