3月11日付Globali「フィリピン、国連人権特別報告者を“テロリスト”として起訴したことで国連人権理事会と全面戦争」の中で触れたとおり、国連人権理事会の国連人権高等弁務官が、ドゥテルテ比大統領は精神科医の診断を受ける必要があると激しく非難している。これへの反発のためか、同大統領は先週、国際刑事裁判所(ICC、注後記)から脱退する旨宣言した。これに対して、フィリピン識者等からは、ICCからの捜査逃れだとの批判の声が上がっている。
3月19日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「フィリピンのICC脱退宣言により、反って麻薬撲滅運動への猜疑心惹起」
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は3月14日、ICCから脱退すると宣言した。ICCや国連が、同大統領を人権蹂躙の鬼等と根拠のない非難をしているからだとする。
しかし、フィリピン大学のジェイ・バトンバカル教授(法律・国際海洋問題)らは、ICCによる超法規的殺人の違法性捜査から逃れるためだと批判している。...
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3月19日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「フィリピンのICC脱退宣言により、反って麻薬撲滅運動への猜疑心惹起」
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は3月14日、ICCから脱退すると宣言した。ICCや国連が、同大統領を人権蹂躙の鬼等と根拠のない非難をしているからだとする。
しかし、フィリピン大学のジェイ・バトンバカル教授(法律・国際海洋問題)らは、ICCによる超法規的殺人の違法性捜査から逃れるためだと批判している。
ICCは2月8日、麻薬撲滅運動に関わる超法規的殺人について、予備捜査に着手する旨発表していた。
ニューヨーク本拠の人権監視団は今年1月、麻薬撲滅運動の名の元、約1万2千人の被疑者が殺害されていると非難している。
なお、フィリピン大統領府のハリー・ローク報道官は3月15日、超法規的殺人の違法性の有無を判断するのはICCではなく、フィリピンの裁判所であるべきだが、ICCが越権行為をしようとしているため、脱退せざるを得ないと説明した。
更に同報道官は、フィリピンの脱退がアジアの他国にも影響を及ぼさないか、ICCは気が気でないであろうとも付言した。
3月18日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「ドゥテルテ比大統領、ICC脱退に当り、ICCは同国に何ら裁判権を有せずと強調」
ドゥテルテ大統領は3月18日、フィリピン陸軍士官学校卒業生を前にしての演説で、ICCは裁判権がないのに、同大統領の麻薬撲滅運動に関わり難癖を付けてきていることから、ICCから脱退することにしたと発言した。
これに関して、フィリピン人権委員会のチト・ガスコン委員長は、ICC脱退宣言で、反って超法規的殺人の違法性について嫌疑が濃厚となるばかりであるとした上で、ICC脱退は大統領の専権事項ではなく、議会上院の承認が必要であるとコメントしている。
3月19日付シンガポール『ザ・ストレーツ・タイムズ』紙(『AFP通信』配信):「ドゥテルテ比大統領、他国にもICC脱退を推奨」
ドゥテルテ大統領は3月18日、フィリピン陸軍士官学校で、ICCが主張していることは理不尽等としてICCから脱退することを決めたが、他国も疑義があるなら躊躇なく脱退すべきだと表明した。
同大統領は更に、所詮ICCは欧州の息のかかった団体で、“黒人差別”のように差別が起こり得る裁判所だとも非難した。
なお、フィリピンは3月16日、人権問題を政治問題化して同国を一方的に非難していることを理由として、ICCから脱退する旨正式に国連に通知している。
(注)ICC:1998年7月、国連全権外交使節会議において採択された国際刑事裁判所ローマ規程に基づき、2003年3月にオランダのハーグに設置された裁判所。判事・検察官などは、締約国会議によって選出。管轄は、個人による集団殺害犯罪、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪など、国際人道法に対する重大な違反を対象。締約国 は 121ヵ国で、日本は2007年7月加入。
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