ドイツ政府は、欧州連合(EU)が加盟国に課している大気汚染改善目標の達成のため、公共交通機関を無償化して道路を走行する車の台数を減らすことを検討していることが13日に明らかになった。
ドイツのメディアは13日、同国のバルバラ・ヘンドリクス環境・建設・原子力安全相、クリスチャン・シュミット農相、ペーター・アルトマイヤー首相府長官が連名で、欧州委員会のカルメヌ・ベッラ委員(環境・海洋・漁業担当)に書簡を送ったことを報じた。
本書簡では、ドイツ政府は道路の交通量を減らすため、公共交通機関の料金を無料とし、二酸化窒素や微粒子などの排出量を削減することを検討していることが説明されている。...
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ドイツのメディアは13日、同国のバルバラ・ヘンドリクス環境・建設・原子力安全相、クリスチャン・シュミット農相、ペーター・アルトマイヤー首相府長官が連名で、欧州委員会のカルメヌ・ベッラ委員(環境・海洋・漁業担当)に書簡を送ったことを報じた。
本書簡では、ドイツ政府は道路の交通量を減らすため、公共交通機関の料金を無料とし、二酸化窒素や微粒子などの排出量を削減することを検討していることが説明されている。無償化は、遅くとも年末までに、西部ドイツの5都市、ボン、エッセン、ロイトリンゲン、マンハイム、シュトゥットガルト(南部のヘレンベルク)で実験的に行われる。
同書簡はまた、バスやタクシーの排気ガスのさらなる削減、大型の輸送車両の低排気ゾーンの設置、カーシェア制度への支援、電動タクシーの増加など電気自動車の奨励策の推進といった様々な措置についても触れている。
ドイツの他、スペイン、フランス、イタリアなどEU域内の9カ国は、二酸化窒素や微粒子に関するEUの基準を1月30日に設定されていた期限までに満たすことができなかった。EUのベッラ委員は各国に時間的な猶予を与え、それぞれの目標を達成するための対策を講じるよう求めたが、これが最後のチャンスとされており、違反国は欧州司法裁判所に提訴され、罰金を科される可能性がある。
対策は急務であり、ヘンドリクス環境相らは、「これ以上の不必要な遅延なしに、効果的に大気汚染対策を進めていくことが、ドイツにとって最優先の課題である。」と書簡で述べているが、自動車大国が提案した大胆な施策は、周辺諸国を驚かせている。
公共交通機関を無料にして利用の促進を図るためには、検討すべき問題も多い。最大の問題は、増加する乗客数に応じ、車両を増やさなければならないことだ。かつそれらは環境に優しいものでなければ余り意味はないが、そうした車両を短期間に大量に供給可能な業者は見当たらない。またドイツの公共交通機関の収入の約半分は運賃収入であり、それがなくなれば、結局増税などの手段で補わざるを得なくなるという懸念もある。
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