スウェーデン政府は、ロシアの軍事的な脅威が増す中で、同国の470万世帯の家庭に対し、戦争に巻き込まれた場合の備えをするよう呼びかける内容のパンフレットを、今春にも配布する準備をしていると、欧米メディアが17日までに報じた。
同パンフレットは、平時の危機や大惨事に備えるばかりでなく、社会やスウェーデンへの異なる種類の攻撃に対しても備えるよう国民に促すものであり、ロシアの脅威の高まりが認識される中で、同国が最近見直した防衛戦略に基づく政策の一部である。有事対応の当局者は、同パンフレットは、バルト海沿岸地域の治安情勢に鑑みて作成されたものと説明しているが、戦争による脅威ばかりではなく、テロによる攻撃や自然災害なども対象としており、偽情報や組織的な宣伝活動等への対処に関する助言も掲載している。
パンフレットは5月末の同国の緊急事態準備週間に配布される予定であるが、「日常生活がひっくり返るような」事態に対し、どのように備えるべきかをスウェーデン人に教育することを目的としており、地方自治体に対し、冷戦時代に使われた防空壕を使えるように準備しておくよう求めている。また、国民が必要とする食料、水、毛布などを確実に備蓄しておくよう、実践的な助言も提供している。スウェーデンは1940年代にも、戦争が勃発した際に備えるためのパンフレットを配布していた。
2017年5月、ペーテル・フルトクビスト(Peter Hultqvist)国防相は、「ロシアの体制は、政治的な目的を果たすために軍事力を行使する用意があることを示した。」と述べた。スウェーデンは北大西洋条約機構(NATO)の加盟国ではないが、NATOとの協力関係を維持し、全土で軍備増強を図っており、国家防衛戦略にかなりの予算を割いている。戦略的に重要なバルト海の島、ゴットランド島には軍の部隊を常駐させている。
スウェーデンは2010年に徴兵制を廃し、その代わりにボランティアに依存する軍の採用システムを導入したが、2017年3月に政策を変更し、2018年から徴兵制を復活させると発表した。2017年9月には、NATO加盟国と共同の大規模な軍事演習も実施した。
同国は2015年2月に防衛費を5年にわたり7億2,000万ドル増額する決定をしたが、軍の要員不足が問題となっている。3月に公表された政府の統計によれば、フルタイムの部隊長や陸海軍兵士など1,000隊が不足しており、6,000人のフルタイム、1万人のパートタイムの人員の増強が計画されているという。
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