米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は7日、美術品としては史上最高額の4億5,030万ドル(約510億円)で先月15日に落札された、イタリアの巨匠、レオナルド・ダビンチ作の「サルバトール・ムンディ(救世主)」について、本当の買い手はサウジアラビアのムハンマド皇太子だったと伝えた。
同絵画はアラブ首長国連邦(UAE)に先月新たにオープンした、ルーブル美術館の別館、ルーブル・アブダビで公開される予定である。今回の落札価格は、従来の競売での史上最高額である、ピカソの絵に付けられた1億7,940万ドルの倍以上だった。史上最高となったため、落札者に関心が寄せられたが、米紙ニューヨーク・タイムズは6日、落札者はサウジのバデル王子と報じていた。
WSJは米国の情報機関や、この落札の事情に詳しいサウジアラビアの美術関係者などの情報から、ムハンマド皇太子が今回の落札の影にいることを突き止めた。...
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同絵画はアラブ首長国連邦(UAE)に先月新たにオープンした、ルーブル美術館の別館、ルーブル・アブダビで公開される予定である。今回の落札価格は、従来の競売での史上最高額である、ピカソの絵に付けられた1億7,940万ドルの倍以上だった。史上最高となったため、落札者に関心が寄せられたが、米紙ニューヨーク・タイムズは6日、落札者はサウジのバデル王子と報じていた。
WSJは米国の情報機関や、この落札の事情に詳しいサウジアラビアの美術関係者などの情報から、ムハンマド皇太子が今回の落札の影にいることを突き止めた。米国の情報機関は、大規模な王族内の汚職摘発などに動いている皇太子の活動をきめ細かく追いかけているという。
バデル王子は、裕福な王家の遠縁の親族で、ムハンマド皇太子の友人でもあり、仕事仲間ともされる。美術品収集家ではなく、今回、実際の買い手を伏せておくために代理人として登場したと言われている。同王子は7日、サウジアラビアの新聞に声明を発表し、「ニューヨーク・タイムズに掲載された自分に関する記事と、その奇妙で不正確な情報に非常に驚いた。」と述べたが、絵画やそれを購入したか否かについては触れなかった。
サウジの有力者であるムハンマド皇太子は、今年6月に皇太子に昇格し、脱石油を目指すプラン「ビジョン2030」を策定し、同国の改革を主導するなどして権力を強化している。同皇太子は先月、王族や閣僚などを含む約200人を汚職の疑いで拘束した追放劇の背後にいると見られ、起訴を猶予され拘束を解かれるためには、不正蓄財を国庫に返納するよう求めている。
そうした中での史上最高額での美術品の購入は、物議を醸すものとなるかも知れない。また、保守的なイスラム教徒にとっては、「サルバトール・ムンディ」がイエス・キリストの姿を描写していることが大きな問題となり得るという。イスラム教徒はイエスを預言者と考えており、人物像、特に預言者の姿を描写することを禁じているからだ。
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