ドナルド・トランプ大統領の初のアジア歴訪を含め、国際社会は北朝鮮の核・ミサイル開発を如何に抑止するかが最大の懸案事項となっている。しかし、一方で、核保有を公に認められた国連常任理事国である中ロにおいて、“抑止力”と称して、核弾頭搭載可能な大陸間弾道ミサイルの発射実験が活発に行われていることを忘れてはなるまい。
11月22日付
『ワシントン・タイムズ』紙:「中国、トランプ大統領訪中直前に大陸間弾道ミサイル発射実験」
米国防総省高官は今週、中国がドナルド・トランプ大統領の訪中2日前に、新規開発した大陸間弾道ミサイル(ICBM、注後記)の発射実験を実施したことを明らかにした。
発射実験がされたのはICBM東風(トンフェン)-41型で、11月6日に実施されたが、米中双方は、トランプ大統領の習近平(シー・チンピン)国家主席との会談前に余計な波風を立てたくないとして秘匿していた。...
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11月22日付
『ワシントン・タイムズ』紙:「中国、トランプ大統領訪中直前に大陸間弾道ミサイル発射実験」
米国防総省高官は今週、中国がドナルド・トランプ大統領の訪中2日前に、新規開発した大陸間弾道ミサイル(ICBM、注後記)の発射実験を実施したことを明らかにした。
発射実験がされたのはICBM東風(トンフェン)-41型で、11月6日に実施されたが、米中双方は、トランプ大統領の習近平(シー・チンピン)国家主席との会談前に余計な波風を立てたくないとして秘匿していた。
ただ、中国トップから人民解放軍へのメッセージとして、依然米国が中国の最大の敵国と捉えていることを示すものと捉えられる。
更に、別の憶測では、習主席が今年4月に訪米した同時期に、米軍がシリア政府軍の化学兵器をトマホーク巡航ミサイルで攻撃したことから、そのお返しとも考えられる。
なお、中国メディアの報道によれば、東風-41は15万トンの弾頭を10個、あるいは1個で550万トンの大型弾頭も搭載できるとする。
また、11月18日付『人民日報』は、東風-41型ICBMは、10個の核弾頭が搭載でき、射程距離は1万2,000キロメーター超であるとツイートした。
一方、ロシアにおいても大規模軍事演習が行われているとの情報を、米情報局がつかんでいる。
すなわち、10月26日夜半に行われた軍事演習では、潜水艦発射弾道ミサイルが3発(太平洋沖で2発、大西洋沖で1発)発射され、また、地上においてもプレセツク宇宙基地(ロシア北西端)からICBMが1度発射されている。
なお、中ロは異口同音に、これらの実験は特定の国を想定したものではなく、あくまで、他国から攻撃されないための抑止力の維持・確認のためであるとしている。
11月23日付『ニューズウィーク』誌:「中国、世界中のどこでも射程可能な10個の弾頭を搭載可能なICBMを発射実験し、2018年の実戦配備を目指す」
国際社会が懸念しているICBMの発射実験は、北朝鮮だけの問題ではなく、中国も盛んに発射実験を繰り返している。
『環球時報』は今週、人民解放軍が10個の弾頭を搭載可能な、飛翔距離1万2,000キロメーター超のICBM東風-41型は、地球上のどこをも射程目標とすることができる中国の最新鋭兵器であると報じた。
中国武器制御・軍縮協会の徐光裕(スー・カンユー)上級顧問は『中国中央テレビ』のインタビューで、核兵器保有量で米国に劣る中国にとって、東風-41などの最新鋭兵器の開発は優先課題であり、これが配備されれば安全保障上かなり有利となるとし、恐らく来年前半には実戦配備されようと語った。
一方、元人民解放軍ロケット部隊所属の軍事専門家の宋(ソン)氏が香港の『フェニックステレビ』に語ったところによれば、中国は既にICBM東風-41型を実戦配備していると思われ、配備後でも発射実験は行われるという。
(注)ICBM:有効射程が超長距離で北アメリカ大陸とユーラシア大陸間(最短で5,500キロメーター)など、大洋に隔てられた大陸間を飛翔できる弾道ミサイル。核弾頭を搭載することが可能。
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