トランプ大統領は、坊主憎けりゃ袈裟までも、という呈で、オバマ前大統領の成果をことごとく否定しようと躍起になっている。環太平洋経済連携協定(TPP)やパリ協定(気候変動対応)からの離脱宣言はもとより、国内でもオバマケア(医療保険制度改革)の無効化に動いている。そして今度は、オバマ氏が「核なき世界」への道筋を付けるために漸く漕ぎ着けた、イラン核合意(注後記)から離脱すると言い出している。交渉をリードしたドイツが、米国な身勝手な行動によって、欧州連合(EU)は益々中ロに接近することになると脅せば、他の首脳も、イランのみならず他の中東諸国までも、核開発競争への参入に仕向けてしまいかねないと警告している。
10月12日付英
『デイリィ・メール・オンライン』(
『ロイター通信』配信):「ドイツ:トランプ大統領のイラン核合意への否定的対応はEUを中ロに接近させるだけ」
ドイツのシグマール・ガブリエル外相は10月12日、ドナルド・トランプ大統領がイラン核合意を“無効化”しようとすれば、EUは益々中ロに歩み寄らざるを得ない結果を招くと警鐘を鳴らした。すなわち、国連等においても何かと米国と対立する中ロの方に、EU主要国がなびくことを意味するとも付言した。
米政府高官、EU幹部や米主要議員まで、イラン核合意を否定することは、米国を孤立させるだけでなく、最悪イランに核開発の道を辿らせかねないとして、トランプ大統領の説得に苦心している。
なお、国連の核開発監視機関は幾度となく、イランが核合意に基づく核開発プログラムの制限条項を遵守していると確認している。
10月13日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「EU、イラン核合意に異常な動きを見せる米国に構わずイラン非核化に邁進」
EU首脳は10月13日、トランプ大統領がイラン核合意から離脱するとなれば、目下イラン核開発制限に向けた国際社会の取進めに悪影響を及ぼすと表明した。ただ、同時に、米国の不確かな対応に拘らず、イラン核合意を具体的に前進させていく方針を固めているとも付言した。
アンゲラ・メルケル首相の盟友でもあるノーベルト・ロートゲン外交委員会委員長は、首脳同士の契約の遵守は基本中の基本であるが、トランプ大統領がそれを侵そうとしていると強く非難している。本合意を無視することは、中東における核開発競争を助長する恐れがあるとも言及した。
なお、欧州の外交官は、米国のイラン核合意に反する動きとして、対イラン経済制裁の再導入等に出てくると、イラン側が経済損失と秤にかけて、イラン核合意を破棄してくる可能性があるとの懸念を表明している。
(注)イラン核合意:米英仏中ロ6ヵ国とイラン間で、1年半余りの交渉の末に2015年7月に合意され、2016年1月に発行した枠組み。これは、イランの核開発活動を最長25年にわたり制約するもので、最初の10年間には特に厳しい制限が課せられる。その見返りとして米国やEUはイランへの制裁を緩和する。ただし、国連の核開発監視機関である国際原子力機関(IAEA)がイランの義務遵守を確認することが前提。
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