7月15日付Globali「南シナ海仲裁裁定から1年、中国による裁定無効化が実現?(2)-フィリピン・インドネシアの細やかな抵抗」の中で、“中国から軍事行動を起こされないぎりぎりのところで、フィリピンが領有権争いの海域での天然資源探査活動の再開を目論めば、インドネシアは、自国の主権範囲と主張する海域について(南シナ海から切り離して)独自の命名を行う等、細やかな抵抗を試みている”と報じた。そして、今度は台湾が、実効支配する南沙(スプラトリー)諸島内のイツアバ島(注後記)に6基の榴弾砲(大砲の一種)を配備して防衛を強化すれば、ベトナムはスペインの多国籍企業に委託して同海域での石油の探査活動を進めている。
7月26日付米
『ザ・クォーツ』オンラインニュース:「台湾、南シナ海で実効支配する小島に榴弾砲を配備して防衛強化」
台湾の
『台北タイムズ』紙の報道によると、台湾は7月24日、南シナ海の南沙諸島内で実効支配するイツアバ島の警護を担当する台湾海岸巡防署(沿岸警備隊や海上保安庁に相当)南沙部隊に、6基の榴弾砲を供給したという。
同島は1956年から台湾が実効支配しているが、他に中国・ベトナム・フィリピン・マレーシアが領有権を主張している。...
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7月26日付米
『ザ・クォーツ』オンラインニュース:「台湾、南シナ海で実効支配する小島に榴弾砲を配備して防衛強化」
台湾の
『台北タイムズ』紙の報道によると、台湾は7月24日、南シナ海の南沙諸島内で実効支配するイツアバ島の警護を担当する台湾海岸巡防署(沿岸警備隊や海上保安庁に相当)南沙部隊に、6基の榴弾砲を供給したという。
同島は1956年から台湾が実効支配しているが、他に中国・ベトナム・フィリピン・マレーシアが領有権を主張している。ただ台湾は、榴弾砲の射程内にある、同島至近のサンド礁を実効支配しているベトナムについて脅威は感じておらず、むしろ、南シナ海全域のほぼ90%を自国主権と主張して、軍事拠点化を進めている中国を念頭に置いた防衛強化とみられる。
なお、同島については、昨年の7月の常設仲裁裁判所(PCA)によって、同島含めて、南沙諸島内には排他的経済水域(EEZ)を設定できる“島”はなく、12海里(約22キロメーター)の領海を主張できる“岩”しか存在しないと裁定されている。そこで、台湾としては、EEZで認められる漁業権・天然資源探査権を行使できなくなったことから、この点においては、PCA裁定を無効とする中国と意見は一致している。
同日付台湾『台北タイムズ』:「イツアバ島に生命維持装置備え付けの飛行機を派遣」
台湾空軍と海岸巡防署は7月24日、生命維持装置備え付けのロッキードC-130貨物機を南沙諸島内のイツアバ島に向かわせ、海難事故等による重傷患者の救出訓練を実施した。同島は台湾から1,600キロメーター南方にあるが、万一同海域で漁民や貨物船などの海難事故が発生した場合、台湾南部の屏東(ピントゥン)空軍基地までの3時間半の飛行中も、重症患者の延命措置が機上で可能とすべく、救出体制を強化する一環で行われた。
海岸巡防署の王茂霖(ワン・マオリン)主任は、南シナ海において2000年以降で累計74回(負傷者延べ104人)の海難救助を実施しており、多くが台湾人漁師であるが、海外貨物船の乗組員も含まれているという。そして同主任は、かかる海難救助体制を強化することで、同海域で領有権を争う周辺国との関係改善に繋がることを期待しているとも語った。
一方、同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「中国、南シナ海で石油掘削を進めるベトナムに圧力」
中国外交部(省に相当)の陸慷(リウ・カン)報道官は7月25日、南シナ海の領有権問題に関わる当事国に対して、一方的な海洋活動を慎むよう強く求めるとした上で、必要に応じて強硬措置を講ずるとも表明した。
目下、南シナ海の南沙諸島において、ベトナム政府から委託されたスペインのレプソル(石油・天然ガスの探査・生産を行う多国籍企業)が、3億ドル(約330億円)を掛けて石油掘削を進めている。
報道によると、中国はベトナムに対して7月24日、即刻探査活動を中止しない場合、強硬措置に出ると圧力をかけたと言われている。
なお、中国海洋石油総公司(CNOOC)の評価によると、南シナ海には約1,250億バレル(約198億7,500万キロリットル)の石油、及び500兆立方フィート(約142億立方キロメーター)の天然ガスが賦存しているという。
(注)イツアバ島:中国名太平島(タイピンダオ)は、南沙諸島の北部に位置する環礁州。南沙諸島中、自然形成された陸地面積が最大の海岸地形で、東西約1,290メーター、南北約370メーターの小島。イツアバとはマレー語で“あれは何だ”の意。
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