トランプ米大統領が就任してから間もなく6カ月となるが、米モンマス大が最近行った世論調査によると、大統領を弾劾すべきとの意見を持つ人の割合が41%となり、リチャード・ニクソン元大統領が2期目の任期を迎えて半年後に行われた調査結果の24%を大きく超えた。
モンマス大学の世論調査は7月13日から16日に行われ、800人から回答を得た。その結果が17日に発表されたが、トランプ大統領を「弾劾すべき」とする回答は41%で、「弾劾すべきでない」は53%だった。これに対し、「ウォーターゲート事件」の捜査が本格化していた1973年の7月に実施した調査で、ニクソン大統領(当時)を「弾劾すべき」と考える人の割合は24%で、「弾劾すべきでない」は62%だった。トランプ氏の大統領選挙運動中のロシアとの関係をめぐる最近の動きは、「ロシアゲート事件」として、ニクソン元大統領が辞任することとなったウォーターゲート事件としばしば比較される。しかし世論調査によると、米国人はロシアゲートの方がより深刻な問題と考えているようだ。
同調査によるトランプ大統領の支持率は39%で、73年7月時点でのニクソン氏の支持率と並んでいる。トランプ大統領を支持しない人は52%だった。5月の調査では支持が39%、不支持が53%だったので、さほどの変化はなかった。モンマス大学世論調査委員会のパトリック・マレー氏は、「たとえトランプ大統領の支持率がニクソン氏と同じ水準であったとしても、1973年より現在の方が弾劾を支持する人が多い。」とニュースリリースの中で述べている。同氏はその原因の1つとして、40年前には余り見られなかった、人の意見に一気に加担する強い党派心のようなものが広がっていると言う。
トランプ大統領のロシアゲート疑惑が明らかになるにつれ、ニクソン元大統領の再選をもくろんでいたグループが、ワシントンのウォーターゲートビルにある民主党全国委員会の本部に侵入して盗聴装置をしかけようとして未遂に終わった「ウォーターゲート事件」とニクソン氏のもみ消し工作が、引き合いに出されることが多くなった。ニクソン元大統領は、ウォーターゲート事件を調査する特別検査官らを解任し、トランプ大統領は、ロシアとの関係を調査していたFBIのコミー長官を解任した等、類似点が多いため、人々の関心を引いている。ウォーターゲート事件を当時取材したワシントンポストの記者の1人であるカール・バーンスタイン氏は、ロシアゲートは潜在的にはウォーターゲートより危険な状況にあると警告したが、もう1人のボブ・ウッドワード元記者は、はっきりとした犯罪にはならないと主張しているという。
モンマス大学の調査は、トランプ氏の弾劾を求める人が多いことを示した初めての調査ではなく、5~6月に行われた別機関による世論調査でも同様の結果だった。但し、実際の弾劾手続の完遂は非常に難しい。議会が最終的にトランプ大統領の有罪を証明して、職を解かなければならないが、現在上下両院とも共和党がコントロールしており、罷免のハードルは高い。
これまで罷免された大統領はいないが、アンドリュー・ジョンソン元大統領が1868年に閣僚の罷免の件で、またビル・クリントン元大統領が1999年に不倫疑惑での偽証をめぐり、弾劾裁判手続が行われている。両氏とも無罪となった。ニクソン元大統領の場合は事情が違い、下院の司法委員会が弾劾を勧告することを決めたが、訴追前に自ら辞任したため、弾劾裁判は行われていない。
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