ワン・ウェブ社は英ヴァージン・グループのブランソン創設者兼会長の支援を受けており、スカイブリッジ社が以前所有していた衛星周波数域を取得して2000年以降衛星経由でブロードバンドインターネット・サービスの提供に取り組んでいる。同社は2007年に企業向けの同様の衛星インターネット・サービスを立ち上げている。O3b ネットワークスというそのベンチャー企業は現在約5000マイルの高さの中周軌道に12の衛星を持ち、グーグル・ファイバーと同じくらい速く、1Gbpsの速度を提供できるサービスを提供している。今回ワン・ウェブ社は世界中に高速ブロードバンドインターネット・サービスを提供するために非静止衛星軌道(NGSO)の技術を用いて約745マイルの高度で地球を周回する720の低軌道衛星を打ち上げる予定だ。同社は現時点でインターネット接続にほとんどアクセスできない地域や困難な地域にサービスを提供し、2022年までに未接続のすべての学校にインターネット接続すること、2027年までにデジタルデバイド解消に向けた橋渡しをするという目標を掲げている。同社は2018年初めに10台の衛星を打ち上げテストを行い、2019年の早い時期に衛星の本格的な打ち上げを予定している。
衛星を使ったインターネット・サービスは現在も利用可能だ。しかし現在使用されている技術では、個人の消費者にとってはオンライン動画の視聴に耐えられるほどの速度は無く費用がかかり、大部分が手の届かないものであり、そのユーザーは企業や緊急接続が必要な自然災害に対応する救援隊員等に限られており、1日最高200ドルの費用がかかる。対照的に、次世代の衛星インターネット・サービスは、静止軌道の代わりに低軌道に衛星を配置して周回させることでデータの遅延を減らし、よりスムーズで高速なインターネットが可能になる。しかし、これにはトレードオフが伴い、より多くの衛星を必要となる。低い軌道では衛星は静止衛星のように1つの地点を恒久的にとどまるのではなく、地球の周りを回ることになる。
同社と同様の衛星を使った宇宙からのインターネット・サービスを計画している他の企業は現在ボーイング、ヴァイアスタット、テレサット、イーロン・マスク氏率いるスペースXなどがある。FCCのサリバン国際局長によれば、これらの会社からの申請ではその衛星の数はわずか2から4,000まで広範囲で、国際局で検討中であると述べている。またフェイスブック、グーグルは開発途上国の巨大な成長市場向けに衛星を使った宇宙からのインターネット・サービスを提供したいと考えている。スペースX社は実際、低軌道上に4,400個の衛星を打ち上げることを計画しており、他の10社とともに昨年FCCに計画を申請した。
FCCの同社への許可は事業全体の第一歩に過ぎない。FCCのオライリー局長は声明の中で衛星インターネット・システムは、インライン干渉や軌道上を漂う宇宙ゴミの防止など多くの問題を抱えており、更なる検討が必要だと述べた。さらに、ワン・ウェブ社への今回の承認にはいくつかの条件がついている。例えばいくつかの周波数へアクセスすることは、将来の多チャンネル画像分配データサービス(MVDDS)の開始により制限される可能性があり、今回のFCCの承認は将来のNGSO規則の制定により変わるとしている。FCCのパイ委員長は多くの企業によりこの事業が推進されることを期待している。
閉じる